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@Iruyan-Zak
Last active November 22, 2015 12:41
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\documentclass[12pt]{ltjsarticle}
\usepackage{notemode}
\begin{document}
\newcommand{\ms}[1]{$\displaystyle \mathrm{#1}$}
%\subsection*{重要:以下の事項は2015/11/21現在に化学の授業で学習している範囲での話である。
%今後の学習、及び編入試験などで以下の事項が覆されても責任は一切負わない。}
\section*{前提}
\subsection*{液性}
物質の液性は以下のように定義される。
\begin{description}
\item[酸性]水素イオン\ms{H^+}を与えるもの
\item[塩基性]\ms{H^+}を受けとれるもの(酸性のものと結びついて中性にできるもの)
\end{description}
酸性の有機物質は組成に酸性の基を含む。
酸性の基は
\begin{itemize}
\item \red{フェノール性水酸基 \ms{-OH}}
\item \red{カルボキシル基 \ms{-COOH}}
\item スルホ基 \ms{-SO_3H}
\end{itemize}
あたりを抑えておけば良さそうである。
(アルコールのOHはアルコール性水酸基といって中性なので注意)
酸の強さについては65ページを参照のこと。
塩基も同様に、塩基性の基を含む物質が塩基となるが、
塩基性の基はアミノ基\ms{-NH_2}のみである。
ついでに、アミノ基を持つ有機物質は\red{アニリン}(と一部のアミノ酸)のみである。
\subsubsection*{まとめ}
\begin{itemize}
\item 酸性の有機化合物は\ms{-OH},\ms{-COOH},\ms{-SO_3H}を持つ。
\item 塩基性の有機化合物は\ms{-NH_2}を持つ。
\item それ以外の有機化合物は、とりあえず全て中性と思っていい。
\end{itemize}
\subsection*{水に可溶か}
水は極性分子である。
どういうことかというと、\ms{H_2O}のH側は$+$の電気を帯びているが、O側は$-$の電気を帯びている。
極性分子である水に溶けやすいのは同じく極性分子である。
例えば、NaCl(Naが$+$、Clが$-$)などの\red{塩はすべて水に易溶}である。
塩でさえあれば、\bold{どんな有機化合物から合成されたとしても}、水に溶ける。
一方、大半の有機化合物は無極性である。
そのため、多くの有機化合物は水に難溶である。
例外として、酢酸やエタノールのように親水基(OHやCOOHなど)を持ち、
かつ、サイズが小さい(炭素原子の数が3以下)
有機化合物であれば水に溶けることができる。
逆に、有機化合物が溶けやすいのは同じ有機化合物である。
エーテル抽出に使うエーテル(ジエチルエーテル:\ms{(C_2H_5)O})も有機化合物である。
エーテル抽出とは、水に溶けない有機化合物を全部エーテルに溶かしこんで、
水溶液の部分とエーテル溶液の部分を作り、それぞれを分液漏斗で分離させる技法である。
なお、エーテルが用いられるのは、エーテルが常温で勝手に飛んで逃げて行ってしまうからである。
ただし、エーテルの蒸気をうかつに吸い込むと昏倒してしまうので、
ドラフトのような換気の良い所で飛ばしてやる必要がある。
\subsubsection*{まとめ}
\begin{itemize}
\item 有機化合物は親水基を持ち、サイズが小さければ水に溶ける。
\item そうでなくても塩にしちゃえば全部水に溶ける。
\item 水に溶けない有機化合物はエーテルには溶ける。
\item エーテルは常温で放置してたら勝手に揮発する。
\end{itemize}
\subsection*{分離技術}
\subsubsection*{塩が水に溶ける性質を利用した分離}
複数の有機化合物の混合液から目的の物質を水を使って抽出するには、
目的の物質の液性によって以下のようにする。
\begin{description}
\item[酸性]混合液にに水酸化ナトリウム水溶液(NaOH aq)を加えて、
目的の酸のナトリウム塩を作る。
できたナトリウム塩は水に溶けるので、
エーテル抽出で"水+水に溶けた塩"(水層)と
"エーテル+エーテルに溶けた目的以外の物質"(エーテル層)とに分ける。
その後、水層に塩酸(HCl aq)を加えて、目的の酸を遊離させる。
遊離した酸は水に難溶な有機化合物なので水層から析出する。
そこを狙ってもう一度エーテル抽出をかける。
\item[塩基性]混合液に塩酸(HCl aq)を加えて、
目的の塩基の塩酸塩を作る。
できた塩は水に溶けるので、
エーテル抽出で"水+水に溶けた塩"(水層)と
"エーテル+エーテルに溶けた目的以外の物質"(エーテル層)とに分ける。
その後、水層に水酸化ナトリウム水溶液(NaOH aq)を加えて、目的の塩基を遊離させる。
遊離した塩基は水に難溶な有機化合物なので水層から析出する。
そこを狙ってもう一度エーテル抽出をかける。
\item[中性]酸塩基の反応で塩をつくれないので、水に溶かしだすことはできない。
逆に言うと、酸と塩基を上記の方法で取り除けば中性の物質だけはエーテル層に残り続ける。
\end{description}
\subsubsection*{弱酸遊離を利用した分離}
酸性の物質が複数種類混ざっているときはNaOHではなく、
炭酸ナトリウム\ms{Na_2CO_3}のような弱酸の塩の水溶液を混合液に加える。
そうするとこの場合では、炭酸より強い酸(安息香酸や酢酸など)が炭酸ナトリウムから
ナトリウムを奪い取ってナトリウム塩を作り、水に溶け込む。
その後、エーテル抽出をかけて分離する。
\subsubsection*{沸点の違いを利用した分離}
中性で液体の有機化合物が混ざっている場合、
これらは沸点の違いで分離できることがある。
一般に単純な物質のほうが沸点が低く、
ベンゼン程度ならば湯浴(100℃程度のお湯で湯せん)で蒸留して分離させることができる。
\subsubsection*{まとめ}
\begin{itemize}
\item 中性でない有機化合物は塩にして水に溶かす。
\item エーテル抽出で水に溶けた塩とその他の有機化合物を分ける。
\item 弱い酸(塩基)で作られた塩に強い酸(塩基)を加えると弱い酸(塩基)が遊離する。
\item 中性の有機化合物は沸点の違いを利用して分離できることがある。
\item 単純な物質ほど沸点は低い。
\end{itemize}
\clearpage
\setcounter{section}{2}
\section{番の問題}
\begin{figure}[htbp]
\includegraphics[width=\textwidth]{q3.png}
\end{figure}
\subsection{物質の把握}
\subsubsection{フェノール}
別名は石炭酸。
フェノール性水酸基OHのHが電離する。
\begin{description}
\item[示性式] \ms{C_6H_5OH}
\item[液性] 弱酸性(強さ:1)
\item[水に可溶か] ベンゼン環を持つ有機化合物なので難溶
\end{description}
\subsubsection{安息香酸}
カルボキシル基を持つ酸。
\begin{description}
\item[示性式] \ms{C_6H_5COOH}
\item[液性] 弱酸性(強さ:3)
\item[水に可溶か] ベンゼン環を持つ有機化合物なので難溶
\end{description}
\subsubsection{アニリン}
アミノ基を持つ、試験範囲ではほぼ唯一の塩基の有機化合物。
\begin{description}
\item[示性式] \ms{C_6H_5NH_2}
\item[液性] 弱塩基性
\item[水に可溶か] ベンゼン環を持つ有機化合物なので難溶
\end{description}
\subsubsection{トルエン}
ベンゼン環の水素原子を1つメタン基に置換したもの。
他の水素原子を1つニトロ基に置換するとニトロトルエンに、
3つニトロ基に置換するとトリニトロトルエンとなってTNT爆弾の原料として使われる。
\begin{description}
\item[示性式] \ms{C_6H_5CH_3}
\item[液性] 中性
\item[水に可溶か] ベンゼン環を持つ有機化合物なので難溶
\end{description}
\subsection{左から解いていきます}
4つの有機化合物の混合液に塩酸を加えると、
混合液の中の\bold{塩基性の物質}が塩酸と塩を作ってい水に溶ける。
塩基性の物質とは上記の性質より\bold{アニリン}であるとわかる。
アニリンと塩酸の反応は、
\begin{align*}
\mathrm{C_6H_5NH_2+HCl \rightarrow C_6H_5NH_3Cl(塩酸アニリン)}
\end{align*}
となる。
よって、2行目の水層には「\red{塩酸アニリン}」が入り、
油層には残りの3つの物質、つまり「フェノール、安息香酸、トルエン」が入る。
3行目のDは\red{アニリン}であると予想される。
(6)の操作で行いたいことは「塩酸アニリンからアニリンだけを遊離させる」ことである。
アニリンは弱塩基性なので、塩酸アニリンからアニリンを遊離させるには、
より強い塩基を加えてやれば良い。
よって、(6)に入る解答の1つとしては、「\red{NaOH aqを加えてエーテル抽出}」がある。
2行目の右側。
(2)の操作で混合液に炭酸ナトリウム水溶液を加えている。
炭酸ナトリウムは炭酸塩で、炭酸は強さが2なので、
混合液中の\bold{安息香酸によって炭酸が遊離}する。
その代わりに安息香酸がナトリウムと結びついて塩を作って水に溶ける。
\begin{align*}
\mathrm{2C_6H_5COOH+Na_2CO_3 \rightarrow 2C_6H_5COONa(安息香酸ナトリウム) + H_2CO_3}
\end{align*}
よって、3行目の水層には「\red{安息香酸ナトリウム}」が入る。
油層には「フェノール、トルエン」が入る。
4行目のAは\red{安息香酸}であると予想される。
(4)の操作で行いたいことは「安息香酸ナトリウムから安息香酸だけを遊離させる」ことである。
安息香酸は弱酸性なので、安息香酸ナトリウムから安息香酸を遊離させるには、
より強い酸を加えてやれば良い。
よって、(4)に入る解答の1つとしては、「\red{HCl aqを加えてエーテル抽出}」がある。
4行目の右側。
(3)の操作で混合液に水酸化ナトリウム水溶液を加えている。
これにより混合液中の酸、つまり\bold{フェノール}がナトリウム塩を作って水層に入る。
\begin{align*}
\mathrm{C_6H_5OH+NaOH \rightarrow C_6H_5ONa(石炭酸ナトリウム・ナトリウムフェノラート)+H_2O}
\end{align*}
5行目の水層には「\red{石炭酸ナトリウム}(もしくはナトリウムフェノラート)」が入り、
油層に入るCは\red{トルエン}とわかる。
最後に6行目の(5)の操作は(4)と同様に「\red{HCl aqを加えてエーテル抽出}」となり、
Bは\red{フェノール}となる。
\clearpage
\section{番の問題}
\begin{figure}[htbp]
\includegraphics[width=\textwidth]{q4.png}
\end{figure}
\subsection{物質の把握}
\subsubsection{ベンゼン}
上の有機化合物の元になる有機化合物。
沸点は80℃程度である。
\begin{description}
\item[示性式] \ms{C_6H_6}
\item[液性] 中性
\item[水に可溶か] ベンゼンなので難溶
\end{description}
\subsubsection{ニトロベンゼン}
ベンゼンの水素原子を1つニトロ基\ms{-NO_2}で置換したもの。
淡黄色で、結構重い。沸点は高め。
\begin{description}
\item[示性式] \ms{C_6H_5NO_2}
\item[液性] 中性
\item[水に可溶か] ベンゼン環を持つ有機化合物なので難溶
\end{description}
\subsection{左から解いていきます}
まず、混合液を100℃程度に熱する。
すると、混合液中で沸点が100℃未満の物質は沸騰し、分離する。
上記の性質より、\bold{ベンゼンは沸点が低い}ので(1)には\red{ベンゼン}が入る。
残留物は「ニトロベンゼン、アニリン、石炭酸(フェノール)」となる。
ここに希塩酸を加えると混合液中の塩基、つまり\bold{アニリン}が塩酸塩を作って水に溶ける。
\begin{align*}
\mathrm{C_6H_5NH_2+HCl \rightarrow C_6H_5NH_3Cl(塩酸アニリン)}
\end{align*}
よって、3行目の水層には「\red{塩酸アニリン}」が入り、
エーテル層には「ニトロベンゼン、石炭酸」が入る。
水層に水酸化ナトリウムを加えると弱塩基の遊離が起きて、アニリンが遊離(析出)する。
よって(2)は\red{アニリン}である。
3行目のエーテル層に水酸化ナトリウムを加えると、
混合液中の酸、つまり\bold{石炭酸}がナトリウム塩を作って水に溶ける。
\begin{align*}
\mathrm{C_6H_5OH+NaOH \rightarrow C_6H_5ONa(石炭酸ナトリウム)+H_2O}
\end{align*}
よって、4行目の水層には「\red{石炭酸ナトリウム}」が、
エーテル層には「\red{ニトロベンゼン}」が入る。
石炭酸ナトリウムに塩酸を加えると、弱酸の遊離が起きて石炭酸が析出する。
よって(3)は\red{石炭酸}である。
(4)はエーテル層のエーテルを飛ばすだけなので、そのまま\red{ニトロベンゼン}が入る。
\clearpage
\section{番の問題}
\begin{figure}[htbp]
\includegraphics[width=\textwidth]{q5.png}
\end{figure}
\subsection{物質の把握}
\subsubsection{酢酸}
カルボキシル基を持つ有機化合物。
\begin{description}
\item[示性式] \ms{CH_3COOH}
\item[液性] 酸性(強さ:3)
\item[水に可溶か] 親水基(\ms{-COOH})を持ち、サイズが小さい(Cが2つ)ので水に溶ける
\end{description}
\subsection{説明文から解きます}
先に、もとの混合液の中の物質の示性式を列挙しておく。
\begin{description}
\item[ベンゼン]\ms{C_6H_6}
\item[ニトロベンゼン]\ms{C_6H_5NO_2}
\item[アニリン]\ms{C_6H_5NH_2}
\item[石炭酸]\ms{C_6H_5OH}
\item[酢酸]\ms{CH_3COOH}
\end{description}
\begin{enumerate}
\item カルボキシル基\ms{-COOH}を持つので\red{\ms{CH_3COOH}}。
\item 水酸基\ms{-OH}を持つので\red{\ms{C_6H_5OH}}。
\item 文脈から、(3),(4)には酢酸か石炭酸のいずれかが入ると予想できる。
炭酸は強さが2の弱酸なので、(3)には強さが3である\red{\ms{CH_3COOH}}が入る。
\item もう一方の酸なので\red{\ms{C_6H_5OH}}。
\item アミノ基\ms{NH_2}を持つので\red{\ms{C_6H_5NH_2}}。
\item (6),(7)は順不同のように見えるが、図より、(6)は沸点(b.p.:Boiling Point)が211℃、
対して(7)の沸点は80℃である。
混合液中の物質の中で中性を示すのはベンゼンとニトロベンゼンであるが、
ニトロベンゼンのほうが\bold{複雑な構造をしているので沸点が高い}。
よって(6)は\red{\ms{C_6H_5NO_2}}。
\item 湯浴上でも蒸留するほど沸点が低い(沸点が80℃)のは\red{\ms{C_6H_6}}。
以降は図に従って解いていく。
\item 最初の操作でナトリウムの炭酸塩(炭酸ナトリウム)の水溶液を混合液に加えている。
これにより、炭酸より強い酸が炭酸ナトリウムからナトリウムを奪ってナトリウム塩を作る。
混合液中で強さが3以上の酸は\bold{酢酸}である。
よって、水溶液層には酢酸ナトリウムが溶け、(8)は\red{\ms{CH_3COOH}}となる。
ちなみに、遊離した炭酸は水溶液に溶けこむが、蒸発乾固と同時に二酸化炭素となって逃げ出す。
\item 有機物層には「ベンゼン、ニトロベンゼン、アニリン、石炭酸」が含まれている。
ここに水酸化ナトリウム水溶液を加えると、混合液中の酸がナトリウム塩を作って水層に入る。
混合液中に残っている酸は\bold{石炭酸}である。
よって、(9)は\red{\ms{C_6H_5OH}}となる。
\item 混合液中に残っている有機物は「ベンゼン、ニトロベンゼン、アニリン」であるが、
すでに(6),(7)がそれぞれニトロベンゼン、ベンゼンであることがわかっているので、
消去法的に(10)は\red{\ms{C_6H_5OH}}となる。(もちろん真面目に解いてもいい)
\end{enumerate}
\end{document}
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\usepackage{luatexja-fontspec}
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\newcommand{\red}[1]{\textcolor{red}{#1}}
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\renewcommand{\~}{$\sim$}
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