広義のボルボックス目に属する三種を比較して多細胞性の仕組みを追求した論文を紹介しました。
- エビ、イシ
- 傷ついた天使 (原題: Haavoittunut enkeli) ... フィンランドの画家 Hugo Simberg の作品。イシのお気に入り。ヘルシンキのアテネウム美術館に所蔵されている。
- ウィトルウィウス的人体図 (原題: Homo Vitruvianus) ... 実物の寸法は 34.4 cm x 25.5 cm。ちなみに脊椎動物ゲノムプロジェクト (GenomeArc) のヒトのページにはウィトルウィウス的人体図が採用されている。
- バベルの塔 ... フランドルの画家 Pieter Brugel I の作品。エビのお気に入り。同じ画題が 2 点現存しており、エビの自宅にあるポスターは 1568 年バージョン。細かな瓦礫の色の描き分けが良い。
- 雪中の狩人 ... 本編でイシが好きだと言っていた Pieter Brugel I の作品。
- Axe throwing ... 斧投げ
- 斧投げ世界大会の動画 ... この2人はダーツのように片手で投げている
- THE AXE THROWING BAR ... 日本で斧投げが楽しめるバー
- Axe of rotation
- 彫刻刀
- Hanschen et al. The Gonium pectorale genome demonstrates co-option of cell cycle regulation during the evolution of multicellularity. Nature Communications (2016) ... 今回紹介した論文。オープンアクセス。Supplementary file にクラミドモナス・ボルボックス・ゴニウムの生活環のイラストがある。
- クラミドモナス
- ボルボックス
- ゴニウム
- 多細胞性 (Multicellularity)
- 門 (分類学)
- 後方鞭毛生物 (オピストコンタ)
- Grosberg and Strathmann. The Evolution of Multicellularity: A Minor Major Transition?. Annual Review of Ecology, Evolution, and Systematics (2007) ... 多細胞性の総説論文。残念ながらオープンアクセスではない。この総説論文の Figure 1 を見ながら、多細胞性の獲得がそれぞれの門で独立に起こったことを説明した。
- Bengtson et al. Three-dimensional preservation of cellular and subcellular structures suggests 1.6 billion-year-old crown-group red algae. PLoS Biology (2017) ... 16 億年前に多細胞性を獲得した紅藻の一種を報告した論文。
- 体細胞分裂 (mitosis)
- 減数分裂 (meiosis)
- Umen and Goodenough. Control of cell division by a retinoblastoma protein homolog in Chlamydomonas. Genes & Developments (2001) ... クラミドモナスにおける Retinoblastoma (Rb) タンパク質のホモログの機能を解析した論文。
- Rb遺伝子
- ジャンクDNA
- エンハンサー
- Last Common Ancestor (LCA)
- Pfam ... タンパク質ファミリーのデータベース。欧州バイオインフォマティクス研究所 EBI が運営。
- サイクリン依存性キナーゼ (cyclin-dependent kinase; CDK)
- レスキュー (遺伝学) ... 遺伝子の機能や発現を欠失させた時に見られた表現型を、当該の遺伝子の機能や発現を増加させて正常な表現型に回復させる実験をレスキュー実験という。参考URL: 機能獲得実験
- Zatulovskiy et al. Cell growth dilutes the cell cycle inhibitor Rb to trigger cell division. Science (2020) ... イシが言及した Rb タンパク質と細胞サイズの論文。哺乳類の培養細胞において、G1 期の細胞成長によって Rb タンパク質の細胞内濃度が "希釈" されることで、細胞サイズが恒常的に保たれるメカニズムを明らかにした論文。過去にエビが Journal Club で紹介していた。本論文のラストオーサーの Jan M. Skotheim のグループは、これ以前に出芽酵母の Whi5/Rb タンパク質について同様のメカニズムを発見していた (Schmoller et al. Dilution of the c/Users/hiro_ebina/Dropbox/Online Journal Club/Podcast/2021.03.27/part2/Episode-3-Multicellularity-notes.txtell cycle inhibitor Whi5 controls budding-yeast cell size. Nature (2015))。細胞そのもののサイズや、細胞内の構造物のサイズがどのように決定されるのか、またそれら制御がどのように細胞の諸機能とリンクするのかという疑問が背景にある。
- Jan Skotheim Tenure Talk at Stanford 2/15 ... 上記の 2015 年の Whi5 論文について、ラストオーサーの Jan M. Skotheim 本人によるプレゼンテーション動画。大変味のある手書きスライドを見ることができる。
- プラスミド
- エピスタシス
- 細胞外マトリックス
- 染色体を一本に繋げる論文 ... Shao et al. Creating a functional single-chromosome yeast. Nature (2018) のこと。詳しくはResearchat.fm episode 41 参照。
- 分裂酵母 ... 分裂酵母に属する 4 種のうち、エビは Schizosaccharomyces pombe を実験に使っている。パン生地を発酵させるのに使われる出芽酵母とは異なる属である。実験でよく使われる酵母については、岡山大学の守屋先生が執筆された分裂酵母 (S. pombe) と出芽酵母 (Saccharomyces cerevisiae) の比較記事がわかりやすい。
- 菌類 (Fungi) と多細胞性 ... 本編を収録した時点でエビは把握していなかったが、そのあと調べると過去数年で菌類と多細胞性に関する原著論文や総説論文が複数発表されていた (例、Heaton et al. A mechanistic explanation of the transition to simple multicellularity in fungi. Nature Communications (2020); Nagy et al. Fungi took a unique evolutionary route to multicellularity: Seven key challenges for fungal multicellular life. Fungal Biology Reviews (2020))。
- Clade (系統群)
- 「ウーパールーパーのゲノムの論文」... Novoshilow et al. The axolotl genome and the evolution of key tissue formation regulators. Nature (2018)
- Rafiqi et al. Origin and elaboration of a major evolutionary transition in individuality. Nature (2020) ... 過去にイシが Journal Club で紹介した論文。宿主の発生 (development) に必要な遺伝子をハイジャックして宿主 (アリ) の発生に不可欠になった共生細菌と、そのハイジャックが進化の過程でステップワイズにすすんだこと示した論文。これは分子遺伝学と系統の組み合わせだったが、microbiome-wide association studies (MWAS) などによってどんどんビッグサイエンス化していくとイシは予想している。
- 「この間の population genetics のあれ」 ... 以前イシが Journal Club で紹介した分裂酵母を使った論文。Adaptive divergence (~ adaptive radiation = 適応放散、厳密には違うがここでは省略) への gene flow (遺伝子流動:集団間での遺伝子コピーの移動の割合。感覚的にはある集団の染色体のプールのうちどのくらいが他の集団由来かという割合だと思っていれば良いかもしれない) の影響を分裂酵母で evolve-and-resequencing (E&R) をして実験的に検証した研究。ラストオーサーの Jochen Wolf はヒタキやカラスを使った speciation genomics や表現型多型の進化の研究で有名。鳥を含め真核生物の population genetics/genomics には組み換え (recombination) が含まれるので、遺伝子流動の影響は染色体全体ではなく( 過去の) 組み換えで区切られたセグメントのレベルでゲノムに残ることになる。酵母を使った E&R はpopulation genomicsのシミュレーションを実際の生物でやるようなもの。この論文を Jochen が解説しているセミナーの動画が YouTube で視聴可能。
- 「エッセイ」 ... Schwartz. The importance of stupidity in scientific research. JCS (2008) のこと。1 ページしかないのでサクッと読めるが、その内容は基礎科学の研究に従事する身として考えさせられる内容となっている。エビはこのTweetで知った。
- 「スペクトラム」 ... イシが同日に紹介したmutation spectraのプレプリントを言及している。近日公開。
- Zotero
- ZotFile
- ranger ... イシがおすすめするターミナルベースのファイルマネージャー。
- ripgrep-all
- Fuzzyfinder(fzf)
- Spotlight ... macOS のパワフルな検索エンジン
- 多細胞性は引き続き注目していきたい。 (エビ)
- この日はドイツのネットが悪かったのかもしれない。(イシ)
- 収録日: 2021.03.27
- 編集: エビ