- 序論
- 生命誕生の時期と科学的根拠
- 炭素同位体比分析
- 微化石とストロマトライト
- 分子時計による進化推定
- 地球の年代測定手法
- 放射年代測定の基礎
- ウラン-鉛法(U-Pb法)
- ルビジウム-ストロンチウム法(Rb-Sr法)
- サマリウム-ネオジム法(Sm-Nd法)
- 地球の形成時期の推定
- 隕石の放射年代測定
- 月の岩石と巨大衝突説
- ハフニウム-タングステン同位体比分析
- 太陽系形成時の物質組成
- 原始太陽系星雲と元素分布
- 太陽形成初期の物質
- 微惑星の成長と惑星形成
- 重元素の起源
- 恒星内部での核融合
- 超新星爆発と中性子星合体
- 太陽系内の元素供給源
- 太陽内部での元素合成
- 水素融合(ppチェーン)
- CNOサイクルによる炭素・窒素・酸素合成
- 恒星の寿命末期における元素放出
- リチウム・ベリリウム・ホウ素の生成と特異性
- 宇宙線核破砕反応
- ビッグバン元素合成との関係
- 太陽系形成前の元素供給源
- まとめ
- 参考文献
宇宙に存在する元素の起源、地球形成の過程、そして生命誕生の時期は、惑星科学および宇宙化学の重要な研究テーマである。本稿では、最新の研究成果を踏まえ、元素合成、惑星形成、生命誕生の関係を論じる。
近年の研究により、地球上の生命誕生の時期は38億年前から40億年前に更新されつつある。その根拠として以下が挙げられる。
グリーンランドのイスア地帯の岩石から生命活動に由来する炭素同位体比の偏りが検出され、約40億年前の生物活動の証拠となっている。
西オーストラリアのジャックヒルズなどで発見された微化石構造やストロマトライトが、生命活動の痕跡として注目されている。
DNAやタンパク質の変異率を用いた分子時計の解析により、最古の共通祖先が40億年以上前に遡る可能性が示唆されている。
地球や太陽系の形成年代を決定するために、放射年代測定が活用されている。特に以下の手法が重要である。
- ウラン-鉛法(U-Pb法):ジルコン鉱物を用いた高精度測定。
- ルビジウム-ストロンチウム法(Rb-Sr法):変成岩や堆積岩の年代推定。
- サマリウム-ネオジム法(Sm-Nd法):岩石の起源解析に活用。
地球が約45億年前に形成されたと推定される証拠には以下がある。
- 隕石の放射年代測定:最古の隕石の年代が約45.6億年前。
- 月の岩石と巨大衝突説:テイアとの衝突による月の形成。
- ハフニウム-タングステン同位体比分析:地球のコア形成時期の推定。
- 原始太陽系星雲の重力崩壊により太陽系が形成。
- 微惑星の衝突・成長を経て惑星が誕生。
- 鉄までの元素:大質量星の核融合で生成。
- 鉄より重い元素:超新星爆発や中性子星合体で生成。
- 太陽内部では主に水素融合(ppチェーン)が進行。
- CNOサイクルにより炭素・窒素・酸素が生成。
- 宇宙線核破砕反応により星間空間で生成。
- ビッグバン元素合成の影響も確認されている。
- 生命誕生は40億年前に遡る可能性が高い。
- 太陽系の重元素はすべて太陽系外で生成。
- リチウム、ベリリウム、ホウ素は宇宙線反応で形成。
- Dalrymple, G. B. (2001). The Age of the Earth. Stanford University Press.
- Allègre, C. J., Manhès, G., & Göpel, C. (1995). Geochimica et Cosmochimica Acta, 59(8), 1445-1456.
- Cameron, A. G. W. (1973). Space Science Reviews, 15(1), 121-146.
- Clayton, D. D. (1983). Principles of Stellar Evolution and Nucleosynthesis. University of Chicago Press.
- Lodders, K. (2003). The Astrophysical Journal, 591(2), 1220-1247.