WireGuardは、シンプルで高速、かつ現代的なVPNプロトコルとして、ネットワークのプライバシーとセキュリティを強化するために利用されます。WireGuardの設定ファイルでの「AllowedIPs
」の設定は、VPN経由で転送したいIPアドレス範囲を指定する重要な部分です。
一般的に、「AllowedIPs
」に0.0.0.0/0
(IPv4全体)や::/0
(IPv6全体)を設定すると、全トラフィックがVPN経由でルーティングされるようになります。しかし、WireGuardの設定では、0.0.0.0/1
と128.0.0.0/1
に分割する方法が推奨される場合があります。この記事では、この設定の理由と意味について詳しく解説します。
0.0.0.0/1
:
- これはIPv4アドレス空間の前半を示し、
0.0.0.0
から127.255.255.255
までの範囲をカバーします。 - 前半の範囲を分割して定義することで、VPNトンネルを通過するIPv4のトラフィックの一部を特定します。
128.0.0.0/1
:
- こちらはIPv4アドレス空間の後半を示し、
128.0.0.0
から255.255.255.255
までの範囲をカバーします。 - これにより、後半のIPアドレス範囲もVPNを通るように設定できます。
この2つを設定することで、IPv4アドレス全体(0.0.0.0
~255.255.255.255
)をカバーすることが可能になります。
::/1
:
- これは、IPv6アドレス空間の前半部分を表し、アドレスが
0
で始まる範囲、つまり::
から7FFF:FFFF:FFFF:FFFF:FFFF:FFFF:FFFF:FFFF
までをカバーします。
8000::/1
:
- IPv6アドレス空間の後半部分に相当し、アドレスが
8
で始まる範囲を示します。具体的には8000::
からFFFF:FFFF:FFFF:FFFF:FFFF:FFFF:FFFF:FFFF
までを含みます。
これら2つの指定により、IPv6アドレス全体(::
~FFFF:FFFF:FFFF:FFFF:FFFF:FFFF:FFFF:FFFF
)がカバーされ、すべてのIPv6トラフィックがVPN経由でルーティングされる設定となります。
AllowedIPs
に0.0.0.0/0
(または::/0
)を指定することで全トラフィックをVPNにルーティングするのが一見シンプルな方法に見えますが、いくつかの理由でこの範囲指定が使われることがあります。
-
ルーティングの互換性:
- 一部のネットワークデバイスや古いルーター、ファイアウォールでは、
0.0.0.0/0
や::/0
の単一指定が適切に解釈されない場合があります。 0.0.0.0/1
と128.0.0.0/1
に分けることで、複数のエントリとして処理され、互換性が向上する可能性があります。
- 一部のネットワークデバイスや古いルーター、ファイアウォールでは、
-
ルーティングテーブルの最適化:
- 大規模なネットワーク構成や複雑なルーティング設定を持つ環境では、ルーティングテーブルが最適化されることで、パケットの送信先が適切に処理されることがあります。
-
トラフィックの管理:
- IPアドレス範囲を分割することで、特定のトラフィックのみをVPN経由で通すといった柔軟な管理が可能になる場合があります。このテクニックを応用して、一部の範囲だけVPNを利用し、他はデフォルトゲートウェイを通過させるような設定も可能です。
WireGuardのAllowedIPs
設定において0.0.0.0/1
と128.0.0.0/1
、および::/1
と8000::/1
を利用することで、IPv4とIPv6の全アドレス範囲をVPNトンネル経由に設定できます。この方法は、互換性やパフォーマンスの向上、ルーティングテーブルの最適化を目的としています。
WireGuard設定ではこうした範囲指定を活用することで、全トラフィックを対象とするVPN設定を信頼性高く実現することができるのです。