トラップはよい機能だけど完全に信頼できるというわけではないよ。SIGKILLとSIGSTOPはトラップできない。
大昔のいくつかのUnixにはSIGKILLをトラップする怪しげな方法があった。もしプログラムがptraceされていたら、どのようなシグナルでも(SIGKILLでも)、そのプロセスを停止させてptraceをしている側のプロセスに通知するという動作になっていた。
そこで僕は"sh"という名前のプログラムを書いた。そのプログラムはメモリサイズを/bin/shと同じになるように注意深く調整したあと、fork & execして、子プロセスをptraceした。子プロセスは"superman"というプログラムだった。僕の偽shは、supermanが何らかのシグナルを受け取ると、そのシグナル番号をsupermanのメモリに書き込んだ後、つねにSIGINTでsupermanを再開するという動作になっていた。supermanのSIGINTハンドラはシグナル番号をみて面白メッセージを表示するようになっていた。
僕はそのプログラムを起動して、システム管理者のところにいって、何かプロセスがkillできないんだけど、と言った。システム管理者は^Cや^\を一応試した後、別の端末からログインしてrootになって、psでsupermanを見つけて、それをkill -9した。
「クリプトン星人にはSIGKILLは効かないぞ」と表示されてプロセスが動き続けているのを見た時の彼の顔といったらなかなかのものだった。
その後のUnixでSIGKILLがptraceされているプログラムをkillするようになったのは、僕はいまだ少し残念に思っている。