7 Research-Based Principles for Smart Teaching, by Ambrose, Bridges, DiPietro, Lovett and Normal (2010) Wiley.
https://www.amazon.com/How-Learning-Works-Research-Based-Principles-ebook/dp/B003IEJZXS
この章では、興味のない学生、やる気の出ない学生に対する対処法が述べられている。
学習者のモチベーションには「教育が提供できる価値 (value)」「学習者の期待 (expectation)」および「支援的 (supportive) な学習環境」という3つの要素が関連しており、このうちどれが欠けてもモチベーションは大幅に低下する。学習者は各自の目標を持っており、それらは必ずしも教育者の希望する目標とは一致しない。また、学生が実際に目標を達成可能だという期待がもてなければモチベーションは上がらない。教育者は学習者が見いだせる価値を確立するとともに、支援的な環境を作ることが望まれる。
- 一般的な方針
- 学習者に柔軟性と裁量を与える
- 学習者が自己評価をする機会を与える
- 価値を確立するためにできること
- 題材を学習者の生活・興味に即したものにする
- 実際的・現実的なタスクを与える
- 学習者の将来と結びつける
- 教員が信じる価値を明確にし、それに従って評価する
- その分野に対する教員の熱意を見せる
- 支援的な環境を作るためにできること
- 課題の目標、学習方法および評価方法を一致させる
- 教育者の期待を明確に述べる
- なにが適切な難しさかを調査し、適切なレベルの課題を与える
- 最初のうちに成功体験をさせる
- 評価基準 (rubric) を明確にする
- 目標に沿ったフィードバックを与える
- フェアな評価にする
- 効果的な学習戦略を教える
この章では、演習を繰り返しても学習がみられないクラスが挙げられている。
演習は学習者・教育者の双方にとってコストがかかるので、効率的におこなう必要がある。「演習」-「評価」-「フィードバック」のサイクルにおいては、つねにそれらが目指す「目標」が一貫していなければならない。目標は焦点が定まっていることが望ましく、演習の難易度とタイミング、分量は適切に調整しなければならない。また、フィードバックは最終的な評価だけを与えるのではなく「なぜそう評価するに至ったか」経緯を説明すべきである。フィードバックは与えるタイミングが重要であることもわかっている。
- 目標に焦点を当てるためにできること
- 学習者の事前知識を調査する
- 目標をより明示的にする
- 評価基準を詳細かつ明確にする
- 複数回のチャンスを与える
- 補助をつけた問題にする (scaffolding)
- 演習の所要時間を示す
- 模範的な例を見せる
- 望んで いないこと を明確にする
- 学習の進展に従って、目標あるいは評価基準を微調整する
- 適切なフィードバックをするには
- 学習者の間違いのパターンを発見する
- 重要な点とそうでない点を明らかにする
- 良い部分と悪い部分を指摘する
- 個人ではなくグループに対してアドバイスする
- こまめにフィードバックできる機会を設ける
- ピアレビューさせる
- 前回のフィードバックをどのように活用したか訊く
この章では、成果の上がらない間違った学習方法に固執し、それを認めようとしない学生の例が挙げられている。
自己改善に必要なのはメタ認知 (metacognition) である。これは自分の能力と限界を把握し、タスクの難しさを見積り、自分自身で成果を観測しつつ、行動戦略の改善をはかるプロセスである。 PDCAにしろOODAにしろ、類似したプロセスはみな何らかのフィードバックループを含んでいる。しかし、自分の能力を冷静に観察できない人、あるいは「自分は変われない」と思いこんでいる人にとって、このプロセスは難しい。
教育者の多くはメタ認知能力をもっており、これを持たない学習者というものは教育者にとってなかなか理解しにくい。これをふまえて、教育者ができることには以下のものがある:
- より多くの明示的な指示を与える
- 「何が目標でないか」を明確にする
- 評価基準を明確にする
- なるべく迅速にフィードバックを与える
- 学習者が目標をどれくらいよく理解しているかテストする
- 学習者に自身の能力をチェックさせる (小テスト、アンケートなど)
- 学習者に自分で計画を立てさせる
- 計画のみを行わせる (実行しない) 課題を与える
- 向かっている方向が正しいかを簡単にチェックできる経験則を教える
- 自分の答案を自分で採点させる
- ピアレビューを経験させる
- 複数のアプローチがあれば教える
- 学習者は「変われる」ということを強調する
- 「理解」は一種類ではなく、複数のレベルと幅があることを教える
- 学習者に現実的な目標を立てさせる
- 教育者自身のメタ認知プロセスを説明する
- 学習者のメタ認知を改善させる課題を与える (scaffolding)
- 特定のステップに集中させる
- 段階的に「手取り足取り」 → 「全部自力で」に移行する