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@gatheluck
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Open AI Deep Researchのテストです

  • モデル:o3-mini-high
  • プロンプト:

https://arxiv.org/pdf/2408.06292

上記URLの"The AI Scientist: Towards Fully Automated Open-Ended Scientific Discovery"のようにAIやLLMを使用して、研究テーマの作成、実装、実験、論文の執筆までを自動化する手法についてのサーベイ論文を作成して下さい。参照にする情報は必ず論文に限定して下さい。ただし、arXivに投稿された論文も参照元として許可します。ブログや解説記事の情報は参照しないで下さい。

論文全体の構成は通常のサーベイ論文のように最初に「イントロダクション」があり、いくつかの章があり、最後に「課題と今後の方向性」があるようにして下さい。


1. イントロダクション

科学研究における知識の爆発的な増大により、研究者が最新の研究動向を把握し新たな研究課題を見出すことはますます困難になっている。近年、人工知能(AI)技術、とりわけ大規模言語モデル(LLM)の飛躍的発展により、科学研究プロセスの各段階を自動化し人間の研究者を支援・拡張する試みが活発化している。LLMは数学問題の解答や定理証明、プログラミングなど特定の科学タスクで人間の専門家を凌ぐ性能を示しており、その能力を研究プロセス全体に適用することで科学的発見の加速が期待されている。

本サーベイ論文では、AIやLLMを用いた科学研究の自動化に関する最新の研究を概観する。まず、LLMによる研究テーマ・課題の自動生成(提案)手法を紹介する。次に、研究の実装および実験の自動化について、シミュレーションから実験計画・実行、データ分析に至る事例を述べる。さらに、論文の自動執筆や校正へのLLM活用について言及し、関連する技術や最新の研究動向を整理する。最後に、現状の課題と今後の展望について議論する。近年提案された完全自動研究エージェントの例として、Luら(2024)の「The AI Scientist」は、研究課題の立案からコードの記述・実行、結果の解析、論文執筆、さらには模擬的な査読までを含む包括的フレームワークを初めて提示しており、本稿ではこのような先駆的取り組みも踏まえて全体像を示す。

2. 研究テーマの自動生成

新規性の高い研究テーマや仮説を見出すことは科学研究の出発点であり、本節ではLLMを用いた研究アイデア創出の手法と動向を概説する。近年の研究では、LLMに既存の文献情報を与えた上で将来の研究課題を提案させ、人間の専門家と比較評価する試みが行われている。例えばKumarらはChemistryやComputer Scienceなど5分野の論文を入力し、複数のLLM(GPT-4、Claude-2、GPT-3.5、Gemini)に将来の研究アイデアを生成させた。評価の結果、GPT-4やClaude-2による提案は著者の見解と高い一致度を示し、特にClaude-2は他のモデルより多様なアイデアを生み出すことが報告された。一方で、LLM生成アイデアの有用性や実現可能性の評価には依然として人間の判断が重要である。Stanford大学らの研究では、人間研究者とLLM(Claudeなど)が生み出した研究アイデアを盲検下で専門家が評価したところ、LLM案の方が新規性で優れるものの実現可能性でやや劣る傾向が示された。このように、LLMは斬新な発想をもたらしうる反面、現実性や多様性に課題があることが指摘されている。

こうした課題に対応し、LLMによる研究アイデア創出を高度化する手法も提案されている。Liらは、人間研究者が文献調査を通じて着想を得るプロセスに着想を得て、関連研究を時系列に沿った「チェーン状」に整理してLLMに提供するChain-of-Ideas (CoI)エージェントを開発した。CoIエージェントは分野の進展を順序立てて把握させることでLLMのアイデア創出能力を高めるものであり、提案手法によってLLMが生み出す研究アイデアの質が従来手法を上回り、人間と同等のレベルに達することが示されている。また、この研究ではアイデア評価手法「Idea Arena」も提案され、生成された研究提案を多面的に評価する枠組みが整えられつつある。他にも、LLMに逐次的なフィードバックを与えてアイデアを洗練させる試みや、複数のLLMに異なる役割(例:批評者や評価者)を担わせて協調的にアイデアを改善する枠組みも模索されている。総じて、LLMを用いた研究テーマ自動生成は新奇性の高い着想を得る有望な手段となりつつあり、人間の創造性を拡張するツールとして注目を集めている。今後はアイデアの現実的有用性を高めるため、人間とのインタラクションや実験結果のフィードバックを組み込んだループ型のアプローチが重要になると考えられる。

3. 研究の実装と実験の自動化

研究上の仮説やアイデアが得られた後、それを検証する実験やシミュレーションの段階でもAIによる自動化が進展している。本節では、LLMエージェントによる実験計画・実行およびデータ分析の自動化について、理論シミュレーションと実験室実験の両面から述べる。

まず、シミュレーション実験の自動化として、WangらはLLMを用いた自律的シミュレーションエージェント(ASA)を開発した。研究者が与えた研究計画書に基づき、LLMが必要な計算コードを段階的に生成し、外部のPython実行環境でコードを実行・デバッグしつつ最終的な結果を得て、得られた結果に関するレポートまで自動的に作成する仕組みである。ASAは高分子物理シミュレーションや小惑星軌道計算など複数の課題に適用され、与えられた研究ミッションを高い完遂率で達成できることが示された。著者らは、このプロセスがシミュレーション研究における世界初の完全自律AI研究実行であると述べており、LLMによる実験自動化の可能性を示す重要なケーススタディとなっている。

次に、現実の実験室における自動化については、AIとロボットを組み合わせて物理実験を行う「ロボット科学者 (robot scientist)」の概念が知られている。例えば2009年に発表されたAdamやEveといったシステムは、培養実験を自動実行し得られたデータから仮説を機械学習で導出することで、新たな酵母遺伝子機能の発見に成功したと報告されている。こうした先行研究では、AIソフトウェアと実験用ロボットを連携させ、仮説の提案から実験実行までを自律的に行うことで人手による試行錯誤を大幅に削減できることが示された。近年ではLLMの導入により、ロボット科学者はさらなる高度化を遂げている。CMUのGomesらが開発したCoscientistシステムは、GPT-4やClaudeといった最新LLMを組み込み、自然言語の指示だけで実験計画の立案からクラウド実験装置の制御までを自動で行うことに成功した。Coscientistはインターネット上の文献や装置マニュアルなど複数情報源をクロールして統合し、実験プロトコルを生成してロボット実行系に送り、化学合成や材料探索といった高度な実験操作を人手を介さず完遂する。これは2023年にNature誌に報告された初のLLM駆動型ロボット化学者の実証であり、その登場は大きな注目を集めた。著者らは「このような自律実験システムは計り知れない発見や新素材の創出をもたらす潜在力があり、人間と機械の協調による新たな研究様式をもたらすだろう」と述べている。加えて、CoscientistではLLM特有の課題である「幻覚」(不正確な内容の生成)を低減するために、実験計画段階でのデータベース検索による知識の裏付けや、結果評価においてLLM自身の判断に頼らず明示的な基準を用いる工夫がなされている。このように、LLMエージェントとロボットを組み合わせた自動実験系は、化学・材料分野を皮切りに実証が進みつつあり、今後他の実験科学領域へも応用が期待される。

さらに、実験データの分析や結果解釈へのLLM活用も進展している。前述のASAのようにシミュレーション結果から自動でレポートを生成する例や、Coscientistのように実験結果に基づき次の実験手順を判断する例は、LLMが単なる指示実行だけでなく得られたデータの解釈・考察まで担えることを示している。加えて、一部の研究ではコード実行中に発生するエラーのスタックトレース情報をLLMにフィードバックし、デバッグや実験手順の修正を自動で行う機構も提案されている。例えばDolphinと呼ばれるフレームワークでは、コード実行失敗時にLLMがエラーメッセージを解析して実験プロトコルを修正・再実行する仕組みを導入し、自動研究の信頼性向上を図っている。これらのアプローチにより、実験サイクル全体を通じて人手の介入を減らし迅速に試行を重ねることが可能となりつつある。従来人間研究者が要していた実験計画の立案から結果解析までの時間を大幅に短縮し、より多くの仮説検証を並行して行える潜在性が示されている。今後は、さらに高度な判断が求められる実験(創造的な装置設計や複雑な手順を要するもの)への適用や、物理世界での不確実性に対処するロバストな計画手法の開発が課題となるだろう。

4. 論文の自動執筆

研究のアイデア創出や実験が自動化されても、その成果を論文という形で発信する工程がボトルネックとなっては研究自動化の利点が十分に生かせない。そこで近年、LLMを用いた学術論文の自動執筆支援が盛んに模索されている。LLMの卓越した自然言語生成能力により、論文のドラフト作成や要約、校正といったタスクは自動化が比較的進みやすい領域である。

まず、プログラミングやデータ解析の結果から直接論文テキストを起こす試みとして、HarperはPythonコードとその出力結果を入力とし、LLMへのプロンプトを駆使して学術論文記事を自動生成するソフトウェアツールを開発した。これは解析コードさえ書けば、その内容を説明する文章や図表の記述をLLMが自動的に生成し論文形式にまとめてくれるものであり、従来研究者が多大な労力を割いていた文章化のプロセスを大幅に短縮し得ることを示している。この手法では高度なエージェントを用いずシンプルなプロンプト設計で実現しているが、それでも複雑なデータセットの要約やコード出力の記述を高い一貫性で行えることが報告されている。将来的にはさらに洗練されたLLMエージェントを組み込むことで、より高度な考察や関連研究との比較記述なども自動化できる可能性が示唆されている。

一方、急速に増加する文献に対応した文献レビュー(サーベイ論文)の自動生成も注目されるトピックである。膨大な関連研究を読み込み整理する作業は時間を要するため、LLMでこの過程を効率化しようとする研究が現れている。GuoらはAutoSurveyと呼ばれる手法を提案し、(1)関連論文の検索・要約取得、(2)LLMによる論文構成の自動生成、(3)各セクション草稿の生成と統合、(4)内容の評価と反復改善、という段階的プロセスで包括的なサーベイ論文を自動的に執筆するフレームワークを構築した。この手法では単一のLLMに全てを書かせるのではなく、トピックごとに専門特化させたLLMエージェントに執筆させるなど分業させることで、文脈長の制限や知識の偏りといった課題に対処している。著者らの評価では、AutoSurveyによって生成されたサーベイは情報網羅性や組織立ての面で質の高いものとなり、従来手法より迅速に文献レビューを作成できることが示された。同様のアプローチとして、LaiらはLLMへの指示をタイトル→概要→見出し構成→本文というステップに細分化するプロンプト設計を提案している。タスクを小さな単位に分け段階的に文章生成させることで文脈の一貫性を保ちつつ長大なレビュー記事を作成可能にし、実際にNLPCC 2024のサーベイ自動生成競技で上位の精度を達成した。これらの研究は、長い論文を一括で生成するのではなく段階的・構造的に執筆させる戦略が有効であることを示している。これは人間のライティングプロセスに近い形でLLMを誘導するものであり、論理的整合性や章間の統一感を維持するのに有用である。

また、LLMは論文の校正や査読への支援にも活用され始めている。例えばJiangらは3つのLLMにそれぞれ「筆者」「読者(一般人)」「編集者」の役割を与え、読者役LLMからのわかりやすさフィードバックと編集者役LLMからの改善提案を筆者役LLMの文章に反映させていく自動文書改善フレームワークを提案した。これは科学ジャーナリズムの記事生成の文脈で提案されたものだが、学術論文の推敲作業にも応用可能なアプローチである。さらに、Luらの「The AI Scientist」システムでは、LLM自身に研究結果の論文執筆を行わせただけでなく、別のLLMエージェントに査読者を模してその論文を批評・採点させることで、完成度を評価・向上させる試みも行われた。この自動査読システムは、人間の査読者に近い基準で論文を評価できるよう設計されており、実験ではAIが生成した論文の出来栄えをかなり正確に判定できたと報告されている。こうした執筆から査読まで含めた包括的な自動化はまだ初期的な試みであるが、将来的には論文投稿前の品質チェックやジャーナル選定のサポートなどに発展する可能性がある。

以上のように、LLMは論文執筆の自動化・支援において強力なツールとなり始めている。しかし、完全な自動執筆には課題も残っており(後述)、現時点では人間研究者とLLMの協調による効率化が現実的である。例えば、LLMがドラフトを作成し人間がそれを校正・補完する形や、セクションごとにLLMで下書きを生成して専門家が内容を検証するといったハイブリッドな執筆プロセスが提案されている。

5. 関連技術と最新研究動向

前節までに述べた各要素技術を統合し、研究プロセス全体を自動化する包括的フレームワークの構築を目指す動きが活発化している。その代表例がLuらの提案した「The AI Scientist」およびそれに触発された一連の研究である。AI Scientistは、アイデア創出・実験実行・論文執筆・査読という一連の研究サイクルを一回りして完了するごとに次のサイクルへ進むという、人間の研究コミュニティに類似したオープンエンドの研究プロセスを志向している。一方、Zhangらの提案したDolphinフレームワークは、研究アイデア→実験→フィードバックという3つのステップからなるクローズドループ(閉ループ)の自動研究サイクルを実現した先駆けであり、各サイクル内で成果をフィードバックして次の仮説立案に活かす点でAI Scientistを発展させたものと位置付けられる。Dolphinでは、関連論文のランキング手法による効率的なアイデア生成や、実験コード自動デバッグ機構による実行成功率向上といった工夫により、自動研究の質と安定性を高めている。評価では、Dolphinが生成したアイデアから得られたモデルが人間設計の最先端モデルに匹敵する性能を示す場合があることが確認されており、自動化エージェントが最先端の研究成果を創出しうる可能性を示した点で注目される。

また、特定領域に特化した自動研究支援ツールも数多く登場している。例えば化学分野では、実験プロトコル計画に特化したLLMエージェントや、化合物の合成経路を予測するモデルなどが開発されている。ChemCrowやCoscientistといったシステムは、科学知識に基づくツール使用やデータベース検索とLLMを組み合わせることで化学実験の様々なタスクを自動化する試みである。さらに材料科学や創薬の分野では、実験計画と機械学習を組み合わせた自律研究プラットフォーム(いわゆる「自動実験室」)の開発も進んでいる。一方、計算機科学分野では、LLMを用いたAutoML(自動機械学習)の研究も活発であり、ハイパーパラメータ最適化やニューラルアーキテクチャ探索にLLMを利用する試みも報告されている。例えば、ある研究ではモデルとデータの記述を入力するとLLMが適切なハイパーパラメータ設定を提案し実験を自動実行するシステムが実現されている。これらの領域特化型のシステムは、研究プロセス自動化の「点」を構築するものであり、最終的にはこれらを結合して包括的な自動研究フレームワーク(「線」や「面」)へと発展させることが展望されている。

最新の研究動向として特筆すべきもう一つの流れは、複数のAIエージェントの協調である。単一のLLMに全てを任せるのではなく、異なる役割を持つエージェント同士が対話・協力することでより高度な問題解決を図るアプローチである。前節で触れたように、文章生成の分野では記者と編集者の役割をAIがそれぞれ担い文章を洗練させる試みがなされている。研究自動化においても、アイデア創出エージェントと評価エージェント、実験計画エージェントとデバッグエージェントといったようにモジュール化されたAI同士が相互チェックし合う設計は、信頼性向上や性能向上のための有望な方向性である。例えば、あるエージェントが提案した実験計画を別のエージェントがシミュレーションで事前評価し、期待される結果が得られない場合には計画を修正するといったプロセスが考えられる。このような協調型AIによる自動研究システムは、人間の研究チームにおけるブrainstorming(ブレインストーミング)や相互レビューのプロセスを模倣するものであり、より創造的かつ堅牢な研究自動化を実現する可能性がある。

6. 課題と今後の方向性

上述のように、AI・LLMを活用した科学研究の自動化は大きな進展を遂げているが、真に人間レベルの研究者エージェントを実現するには依然多くの課題が残されている。本節では現状の限界と課題を整理し、今後の研究方向性について述べる。

(1) 信頼性と正確性の課題: LLMはしばしば事実と異なる内容(幻覚)をもっともらしく生成してしまう問題があり、研究アイデアや論文において誤った主張を含めるリスクがある。特に科学分野では、事実誤認やデータの不整合は致命的であるため、LLMのアウトプットを検証する仕組みが不可欠である。現在のところ、人間研究者が内容をチェックするか、Coscientistのようにデータベースや既存文献で裏付けを取る、あるいは別のAIエージェントに評価させるといった対策が取られている。今後は、LLM自体の事実性向上(例えば専門知識を組み込んだ事前学習やファクトチェック機能の強化)や、知識グラフとの連携による裏付け生成などの研究が求められる。

(2) 多様性と創造性の課題: アイデア創出において、LLMは大量に生成すると単調なバリエーションしか出せなくなるなどの多様性の限界が指摘されている。また、LLMの発想は学習データに依存するため、真に画期的な「ブレイクスルー」を独力で生み出せるかについて懐疑的な見方もある。人間の研究者は経験や直感、異分野からの着想によって革新的アイデアを生むが、LLMにそうした創造的飛躍が可能かは未解明である。これに対し、今後は人間とAIの協調による創造性拡張が一つの方向性となる。例えば、LLMが提案した奇抜なアイデアの中から人間が着想を得て発展させる、といったインタラクティブな使い方である。またモデル側でも、多様性を担保するための生成制御手法(プロンプトのバリエーション、生成過程へのランダム性付与など)や、進化的アルゴリズムを用いてアイデアを交叉・変異させる手法の研究が考えられる。

(3) 評価とベンチマークの課題: 自動生成された研究アイデアや論文の質を評価する客観的な指標づくりも重要な課題である。現状では人間の専門家評価に頼る部分が大きいが、規模を考えると恒常的に人手評価するのは困難である。LLM自身に評価させる試みもあるが、LLMは信頼できる評価者にはなり得ないとの報告もある。このため、例えばIdea Arenaのように複数の観点(新規性、妥当性、インパクトなど)から評価するスコアリング手法や、自動査読エージェントのように訓練データを用いて人間査読者に近い評価基準を学習させるアプローチが模索されている。将来的には、研究公正さや再現性までも考慮した総合的な評価指標の確立が望まれる。また、研究自動化システム同士を競わせる標準ベンチマーク(例えば与えられたデータから新規発見をどれだけ正しく導けるかを競う課題設定)の開発も、分野の発展に資すると考えられる。

(4) インテグレーションと汎用性の課題: 研究プロセスの各ステップを自動化するモジュールはそれぞれ登場しているが、これらを統合して汎用的な研究エージェントとするにはシステム統合上の困難がある。ある領域では有効な手法も、異なる領域では通用しない場合があり、分野ごとの知識や実験装置とのインターフェースを柔軟に適応できる設計が必要である。また、大規模なLLMエージェントを実行するための計算資源やコストも無視できない問題である。AI Scientistのようなシステムは1つの論文生成に数十ドル相当のAPIコストを要すると報告されており、研究規模が大きくなるほどコスト効率の問題が出てくる。将来的には、オープンソースの高性能モデルの活用や、計算効率に優れたアルゴリズムの開発、クラウド実験リソースの共有化などを通じて、多くの研究者が自動研究エージェントを利用できる環境を整えることが重要である。

(5) 倫理・社会的課題: 最後に、研究の自動化が進むことによる倫理的・社会的な影響にも注意が必要である。AIが発見した知見の信用性や、発見に対する責任の所在(例えば誤った発見がなされた場合の責任)は明確にしておかねばならない。また、論文をAIが執筆する場合、その著者や貢献の扱い、研究倫理(盗用や不正確な引用の検出など)に関する新たなルール整備も求められるだろう。さらに、科学研究における人間の役割についても議論がある。AIがルーチン的な作業を肩代わりする一方で、人間は創造性や価値判断が求められる部分に集中できるというポジティブな見方がある一方、研究者の経験蓄積や直感的洞察の機会が減ることを懸念する声もある。今後、人間とAIの協調的関係を如何に構築するかが重要となる。Gomesらは、自律実験AIと人間研究者の関係を「相乗的パートナーシップ」と表現しており、AIはあくまで道具ないし共同研究者として位置付け、人間の監督と責任の下で活用することが望ましい。

以上の課題を踏まえつつ、今後の研究自動化の方向性としては、より高度なフィードバックループの実現、専門知識とLLMの統合、協調型マルチエージェントの活用、評価手法の高度化、人間とのインタラクション設計などが挙げられる。例えば、実験から得た知見を即座に次の仮説に反映できる学習機構を組み込めば、失敗から学習する真の意味での科学的探究をAIが行えるようになるだろう。また、ドメイン固有の専門的推論(化学反応の機構解析や物理法則の発見など)においては、知識グラフやシンボリックAIとのハイブリッドが有望かもしれない。協調型エージェントについては、異種モデル間で役割分担することで一モデルでは困難な長期的文脈保持や創発的効果を引き出す研究が期待される。評価手法の高度化については、研究コミュニティ全体で共有できる評価基盤の構築が必要であり、AIが生み出した発見の再現実験を自動で行う仕組みなど、ユニークな提案も考えられる。

総括すると、AIとLLMを用いた科学研究の自動化は、今まさに黎明期から発展期へと移行しつつあるホットトピックである。現時点で報告されている事例では、限定的な条件下ではあるもののAIが一連の研究プロセスを独力で完遂し、新たな知見を創出できることが示され始めている。特にAI ScientistやDolphinの成果は、トップ会議に採択可能なレベルの論文を自動生成したり、最先端モデルに匹敵する性能を自動的に達成したりといった、数年前には想像し難かった到達点を示している。一方で、この分野はまだ解決すべき課題も多く、人間の英知と経験を完全に置き換えるには至っていない。しかしながら、適切な形で人間とAIが協働できれば、「無限に安価な創造性とイノベーション」を世界にもたらす潜在力を持つことが示唆されている。今後の研究の進展により、科学の進め方そのものが変革される可能性があり、それは人類が直面する最も困難な問題にも新たな解決策をもたらすだろう。科学研究の自動化というフロンティアは始まったばかりであり、我々は人間とAIの協調による新たな知の創造時代に向けた第一歩を踏み出していると言える。

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