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電書ラボ公開セミナー2016 第一回で使用したチュートリアル素材です。

でんでんコンバーター チュートリアル用テキスト

電書ラボ公開セミナー2016 第一回で使用したでんでんコンバーターのチュートリアル素材です。 使用した文章は月刊群雛 2015年03月号収録のゲストコラム「僕の『電子書籍元年』」の抜粋です。Kindle版の購入はこちら

.txtと.mdファイルはでんでんマークダウンで記述しています。でんでんマークダウンの記法はこちらを参照してください。

tu00.txt

何も加工していない素のテキストファイルです。

tu01.md

見出しのマークアップを加えています。RAWボタンを押すとマークアップが確認できます。

## はじめに ##

tu02.md

空行を入れて段落をp要素として表現しています。

tu03.md

表外漢字にルビをふってみました。

三〇歳を過ぎても僕は自分の人生の{躓|つまづ}きを受け入れられずにいた。
とはいえ今から勉強するのも{癪|しゃく}な話だ。

グループルビと熟語ルビ

グループルビ: 省力的。汎用的。

{電子出版|でんししゅっぱん}を手軽に

熟語ルビ: 親文字とルビ文字の対応関係を作れる。途中で改行できる。

{電子出版|でん|し|しゅっ|ぱん}を手軽に

tu04.md

強調マークアップ(em要素)を使って圏点を表現してみました(なお原本にこの表現はありません)。

*失敗を経てプレイするのは馬鹿馬鹿しい*。

強調を圏点のレイアウトにするには、次の記述を加えたCSSをテキストファイルとともにアップロードする必要があります。

ビュレットの圏点

em { 
  font-style: normal;
  -epub-text-emphasis-style: filled dot;
  text-emphasis-style: filled dot;
}

ゴマ点の圏点

em { 
  font-style: normal;
  -epub-text-emphasis-style: filled sesame;
  text-emphasis-style: filled sesame;
}

tu05.md

一部の数字の表記を縦中横にしています(なお原本にこの表現はありません)。使う桁数が増えるほど、レイアウトが破綻するリスクが高まるので原則2桁、多くても3桁までにとどめるべきです。

1プレイ^50^円のゲーセンなら^300^円で半日は潰せる。

tu06.md

「はじめに」と「一」の間に改ページを入れています。

 これから話すのは、そんな僕に訪れた「電子書籍元年」の出来事だ。実のところ「電子書籍元年」がいつを指すのかは諸説ある。一九九八年の電子書籍コンソーシアムの頃や、リブリエ、シグマブックが発売された二〇〇三〜二〇〇四年頃を指すこともある。どちらも僕の知らない過去の話だ。最近ではタブレットや電子ペーパー端末が相次いで登場した二〇一〇年を指すことが多い。まだ「電子書籍元年」は来ていないという人もいる。人それぞれの「電子書籍元年」があっていいと思う。僕の「電子書籍元年」は二〇一〇年。

==========

## 一 ##

ddconv.yml

でんでんコンバーターの設定ファイルです。書誌情報や変換オプションなどを指定しています。

# バージョン
ddconvVersion: 1.0 # 必須。この行は編集しないでください。
# 出版物の識別子
identifiers:
- content: 90838AC2-AF41-43D6-BBA8-8CE357463001 # 具体的な識別子を指定します。
# identifier-type: uuid # 「uuid」または「isbn」を指定します。
# タイトル
titles:
- content: 僕の「電子書籍元年」 # タイトルを指定します。(必須)
# 作成者等
creators:
# 作成者1 --------
- content: 高瀬 拓史 # 著者などの名前を指定します。
role: aut
# 出版物が使用する言語(必須)
language: ja #日本語=ja、英語=enなど
# 出版年月日
#date: 20130214 # YYYYMMDDの形式で指定します。
# ページ送り方向
pageDirection: rtl # 横書き=ltr、縦書き=rtl
# EPUB出力オプション
# true: 有効、false: 無効
options:
titlepage: true # 扉ページを自動生成する true|false
tocInSpine: true # 目次ページを自動生成する true|false
tocDisplayDepth: 6 # 目次ページに表示する目次の階層を指定する 1-6
displayLandmarksNav: false # 目次ページにランドマークを表示する true|falase
displayLoiNav: false # 目次ページに図版一覧を表示する
displayLotNav: false # 目次ページに表一覧を表示する true|false
kepub: false # kobo Touch向け拡張子「.kepub.epub」を利用する true|false
はじめに
 二〇代の頃はゲームばかりやっていた。1プレイ五〇円のゲーセンなら三百円で半日は潰せる。人と関わりたくはないので対戦プレイはしない。いつでも一人プレイ。家ではRPGやシミュレーションゲーム。こまめに経過をセーブする完璧志向。気に入らないことがあれば即リセットしてやり直す。失敗を経てプレイするのは馬鹿馬鹿しい。三〇歳を過ぎても僕は自分の人生の躓きを受け入れられずにいた。
 六年半かけて大学を出たが就職先が見つからない。アルバイト、派遣社員を経てIT業界の小さな会社に潜り込んだ。そこから通信系や金融系のプロジェクトに一人きりで派遣される。コンピューターに興味があったわけではない。他に仕事がなかっただけだ。自分に合った職業には思えない。学ぶ機会がなかったからプログラムは書けない。システムの設計方法もよくわからない。とはいえ今から勉強するのも癪な話だ。不貞腐れたまま年齢だけを重ねていった。
 これから話すのは、そんな僕に訪れた「電子書籍元年」の出来事だ。実のところ「電子書籍元年」がいつを指すのかは諸説ある。一九九八年の電子書籍コンソーシアムの頃や、リブリエ、シグマブックが発売された二〇〇三〜二〇〇四年頃を指すこともある。どちらも僕の知らない過去の話だ。最近ではタブレットや電子ペーパー端末が相次いで登場した二〇一〇年を指すことが多い。まだ「電子書籍元年」は来ていないという人もいる。人それぞれの「電子書籍元年」があっていいと思う。僕の「電子書籍元年」は二〇一〇年。
 二〇一〇年一月二十日、僕は勤務先を早退して日本電子出版協会(以下、JEPA)を訪ねていた。日本の電子出版の総本山みたいな名称の団体。実際は一般書よりも電子辞書などに馴染みが深い団体なのだけれど、僕がそれを知るのはもう少し後の話。だからこの時はやたらと緊張していた。出版の世界とはまったく縁のない人生だったから。
 僕が呼ばれた理由は、僕が前の年に電子出版物の標準フォーマットEPUBの仕様書を勝手に日本語訳してウェブ上に公開していたためだ。誰もが自由に本を作って誰かに届けることのできる世界に憧れがあった。偶然ニュースで知ったEPUBはまさにそのためのフォーマットに思えた。しかしGoogleでEPUBを調べた時にヒットした日本語記事は十件にも満たなかった。日本語の資料を公開しておけば同じ理想を持った誰かを手助けできるかもしれない。そう思ったのだ。仕様書を読むのも翻訳するのも何もかもが初めての体験だったが、少しばかり誰かの役に立つようなことがしてみたかった。一方、JEPAでは前年の十一月にEPUB研究会を発足。EPUBの普及啓蒙と日本語処理の推進活動を開始していた。そして関係者のツイッターを通じて僕にコンタクトがあった。
「EPUBで縦書きができるようにしよう」
 この日、主催者の下川和男さん(JEPA副会長)が語った内容を一言で表せばそういうことになる。米国でシェアを高めているEPUBだが、縦書きやルビといった日本語のレイアウトには課題があった。そこでEPUBを策定する団体IDPF(国際電子出版フォーラム)に対応の要望を出そうというのだ。協力を求められた僕はEPUB研究会の一員となった。
 それから一週間後の一月二十七日。かねてより電子書籍ビジネスへの参入が噂されていたアップルがタブレット端末iPadを発表する。同時に電子書籍ストアであるiBook Store(現iBooks Store)も発表された。そこで使われるフォーマットはEPUB。普段三十くらいのアクセスしかなかった僕のブログはこの日三千ほどのアクセスを記録した。

はじめに

 二〇代の頃はゲームばかりやっていた。1プレイ五〇円のゲーセンなら三百円で半日は潰せる。人と関わりたくはないので対戦プレイはしない。いつでも一人プレイ。家ではRPGやシミュレーションゲーム。こまめに経過をセーブする完璧志向。気に入らないことがあれば即リセットしてやり直す。失敗を経てプレイするのは馬鹿馬鹿しい。三〇歳を過ぎても僕は自分の人生の躓きを受け入れられずにいた。
 六年半かけて大学を出たが就職先が見つからない。アルバイト、派遣社員を経てIT業界の小さな会社に潜り込んだ。そこから通信系や金融系のプロジェクトに一人きりで派遣される。コンピューターに興味があったわけではない。他に仕事がなかっただけだ。自分に合った職業には思えない。学ぶ機会がなかったからプログラムは書けない。システムの設計方法もよくわからない。とはいえ今から勉強するのも癪な話だ。不貞腐れたまま年齢だけを重ねていった。
 これから話すのは、そんな僕に訪れた「電子書籍元年」の出来事だ。実のところ「電子書籍元年」がいつを指すのかは諸説ある。一九九八年の電子書籍コンソーシアムの頃や、リブリエ、シグマブックが発売された二〇〇三〜二〇〇四年頃を指すこともある。どちらも僕の知らない過去の話だ。最近ではタブレットや電子ペーパー端末が相次いで登場した二〇一〇年を指すことが多い。まだ「電子書籍元年」は来ていないという人もいる。人それぞれの「電子書籍元年」があっていいと思う。僕の「電子書籍元年」は二〇一〇年。

 二〇一〇年一月二十日、僕は勤務先を早退して日本電子出版協会(以下、JEPA)を訪ねていた。日本の電子出版の総本山みたいな名称の団体。実際は一般書よりも電子辞書などに馴染みが深い団体なのだけれど、僕がそれを知るのはもう少し後の話。だからこの時はやたらと緊張していた。出版の世界とはまったく縁のない人生だったから。
 僕が呼ばれた理由は、僕が前の年に電子出版物の標準フォーマットEPUBの仕様書を勝手に日本語訳してウェブ上に公開していたためだ。誰もが自由に本を作って誰かに届けることのできる世界に憧れがあった。偶然ニュースで知ったEPUBはまさにそのためのフォーマットに思えた。しかしGoogleでEPUBを調べた時にヒットした日本語記事は十件にも満たなかった。日本語の資料を公開しておけば同じ理想を持った誰かを手助けできるかもしれない。そう思ったのだ。仕様書を読むのも翻訳するのも何もかもが初めての体験だったが、少しばかり誰かの役に立つようなことがしてみたかった。一方、JEPAでは前年の十一月にEPUB研究会を発足。EPUBの普及啓蒙と日本語処理の推進活動を開始していた。そして関係者のツイッターを通じて僕にコンタクトがあった。
「EPUBで縦書きができるようにしよう」
 この日、主催者の下川和男さん(JEPA副会長)が語った内容を一言で表せばそういうことになる。米国でシェアを高めているEPUBだが、縦書きやルビといった日本語のレイアウトには課題があった。そこでEPUBを策定する団体IDPF(国際電子出版フォーラム)に対応の要望を出そうというのだ。協力を求められた僕はEPUB研究会の一員となった。
 それから一週間後の一月二十七日。かねてより電子書籍ビジネスへの参入が噂されていたアップルがタブレット端末iPadを発表する。同時に電子書籍ストアであるiBook Store(現iBooks Store)も発表された。そこで使われるフォーマットはEPUB。普段三十くらいのアクセスしかなかった僕のブログはこの日三千ほどのアクセスを記録した。

はじめに

 二〇代の頃はゲームばかりやっていた。1プレイ五〇円のゲーセンなら三百円で半日は潰せる。人と関わりたくはないので対戦プレイはしない。いつでも一人プレイ。家ではRPGやシミュレーションゲーム。こまめに経過をセーブする完璧志向。気に入らないことがあれば即リセットしてやり直す。失敗を経てプレイするのは馬鹿馬鹿しい。三〇歳を過ぎても僕は自分の人生の躓きを受け入れられずにいた。

 六年半かけて大学を出たが就職先が見つからない。アルバイト、派遣社員を経てIT業界の小さな会社に潜り込んだ。そこから通信系や金融系のプロジェクトに一人きりで派遣される。コンピューターに興味があったわけではない。他に仕事がなかっただけだ。自分に合った職業には思えない。学ぶ機会がなかったからプログラムは書けない。システムの設計方法もよくわからない。とはいえ今から勉強するのも癪な話だ。不貞腐れたまま年齢だけを重ねていった。

 これから話すのは、そんな僕に訪れた「電子書籍元年」の出来事だ。実のところ「電子書籍元年」がいつを指すのかは諸説ある。一九九八年の電子書籍コンソーシアムの頃や、リブリエ、シグマブックが発売された二〇〇三〜二〇〇四年頃を指すこともある。どちらも僕の知らない過去の話だ。最近ではタブレットや電子ペーパー端末が相次いで登場した二〇一〇年を指すことが多い。まだ「電子書籍元年」は来ていないという人もいる。人それぞれの「電子書籍元年」があっていいと思う。僕の「電子書籍元年」は二〇一〇年。

 二〇一〇年一月二十日、僕は勤務先を早退して日本電子出版協会(以下、JEPA)を訪ねていた。日本の電子出版の総本山みたいな名称の団体。実際は一般書よりも電子辞書などに馴染みが深い団体なのだけれど、僕がそれを知るのはもう少し後の話。だからこの時はやたらと緊張していた。出版の世界とはまったく縁のない人生だったから。

 僕が呼ばれた理由は、僕が前の年に電子出版物の標準フォーマットEPUBの仕様書を勝手に日本語訳してウェブ上に公開していたためだ。誰もが自由に本を作って誰かに届けることのできる世界に憧れがあった。偶然ニュースで知ったEPUBはまさにそのためのフォーマットに思えた。しかしGoogleでEPUBを調べた時にヒットした日本語記事は十件にも満たなかった。日本語の資料を公開しておけば同じ理想を持った誰かを手助けできるかもしれない。そう思ったのだ。仕様書を読むのも翻訳するのも何もかもが初めての体験だったが、少しばかり誰かの役に立つようなことがしてみたかった。一方、JEPAでは前年の十一月にEPUB研究会を発足。EPUBの普及啓蒙と日本語処理の推進活動を開始していた。そして関係者のツイッターを通じて僕にコンタクトがあった。

「EPUBで縦書きができるようにしよう」

 この日、主催者の下川和男さん(JEPA副会長)が語った内容を一言で表せばそういうことになる。米国でシェアを高めているEPUBだが、縦書きやルビといった日本語のレイアウトには課題があった。そこでEPUBを策定する団体IDPF(国際電子出版フォーラム)に対応の要望を出そうというのだ。協力を求められた僕はEPUB研究会の一員となった。

 それから一週間後の一月二十七日。かねてより電子書籍ビジネスへの参入が噂されていたアップルがタブレット端末iPadを発表する。同時に電子書籍ストアであるiBook Store(現iBooks Store)も発表された。そこで使われるフォーマットはEPUB。普段三十くらいのアクセスしかなかった僕のブログはこの日三千ほどのアクセスを記録した。

はじめに

 二〇代の頃はゲームばかりやっていた。1プレイ五〇円のゲーセンなら三百円で半日は潰せる。人と関わりたくはないので対戦プレイはしない。いつでも一人プレイ。家ではRPGやシミュレーションゲーム。こまめに経過をセーブする完璧志向。気に入らないことがあれば即リセットしてやり直す。失敗を経てプレイするのは馬鹿馬鹿しい。三〇歳を過ぎても僕は自分の人生の{躓|つまづ}きを受け入れられずにいた。

 六年半かけて大学を出たが就職先が見つからない。アルバイト、派遣社員を経てIT業界の小さな会社に潜り込んだ。そこから通信系や金融系のプロジェクトに一人きりで派遣される。コンピューターに興味があったわけではない。他に仕事がなかっただけだ。自分に合った職業には思えない。学ぶ機会がなかったからプログラムは書けない。システムの設計方法もよくわからない。とはいえ今から勉強するのも{癪|しゃく}な話だ。不貞腐れたまま年齢だけを重ねていった。

 これから話すのは、そんな僕に訪れた「電子書籍元年」の出来事だ。実のところ「電子書籍元年」がいつを指すのかは諸説ある。一九九八年の電子書籍コンソーシアムの頃や、リブリエ、シグマブックが発売された二〇〇三〜二〇〇四年頃を指すこともある。どちらも僕の知らない過去の話だ。最近ではタブレットや電子ペーパー端末が相次いで登場した二〇一〇年を指すことが多い。まだ「電子書籍元年」は来ていないという人もいる。人それぞれの「電子書籍元年」があっていいと思う。僕の「電子書籍元年」は二〇一〇年。

 二〇一〇年一月二十日、僕は勤務先を早退して日本電子出版協会(以下、JEPA)を訪ねていた。日本の電子出版の総本山みたいな名称の団体。実際は一般書よりも電子辞書などに馴染みが深い団体なのだけれど、僕がそれを知るのはもう少し後の話。だからこの時はやたらと緊張していた。出版の世界とはまったく縁のない人生だったから。

 僕が呼ばれた理由は、僕が前の年に電子出版物の標準フォーマットEPUBの仕様書を勝手に日本語訳してウェブ上に公開していたためだ。誰もが自由に本を作って誰かに届けることのできる世界に憧れがあった。偶然ニュース[^sony-epub]で知ったEPUBはまさにそのためのフォーマットに思えた。しかしGoogleでEPUBを調べた時にヒットした日本語記事は十件にも満たなかった。日本語の資料を公開しておけば同じ理想を持った誰かを手助けできるかもしれない。そう思ったのだ。仕様書を読むのも翻訳するのも何もかもが初めての体験だったが、少しばかり誰かの役に立つようなことがしてみたかった。一方、JEPAでは前年の十一月にEPUB研究会を発足。EPUBの普及啓蒙と日本語処理の推進活動を開始していた。そして関係者のツイッターを通じて僕にコンタクトがあった。

「EPUBで縦書きができるようにしよう」

 この日、主催者の下川和男さん(JEPA副会長)が語った内容を一言で表せばそういうことになる。米国でシェアを高めているEPUBだが、縦書きやルビといった日本語のレイアウトには課題があった。そこでEPUBを策定する団体IDPF(国際電子出版フォーラム)に対応の要望を出そうというのだ。協力を求められた僕はEPUB研究会の一員となった。

 それから一週間後の一月二十七日。かねてより電子書籍ビジネスへの参入が噂されていたアップルがタブレット端末iPadを発表する。同時に電子書籍ストアであるiBook Store(現iBooks Store)も発表された。そこで使われるフォーマットはEPUB。普段三十くらいのアクセスしかなかった僕のブログはこの日三千ほどのアクセスを記録した。

はじめに

 二〇代の頃はゲームばかりやっていた。1プレイ五〇円のゲーセンなら三百円で半日は潰せる。人と関わりたくはないので対戦プレイはしない。いつでも一人プレイ。家ではRPGやシミュレーションゲーム。こまめに経過をセーブする完璧志向。気に入らないことがあれば即リセットしてやり直す。失敗を経てプレイするのは馬鹿馬鹿しい。三〇歳を過ぎても僕は自分の人生の{躓|つまづ}きを受け入れられずにいた。

 六年半かけて大学を出たが就職先が見つからない。アルバイト、派遣社員を経てIT業界の小さな会社に潜り込んだ。そこから通信系や金融系のプロジェクトに一人きりで派遣される。コンピューターに興味があったわけではない。他に仕事がなかっただけだ。自分に合った職業には思えない。学ぶ機会がなかったからプログラムは書けない。システムの設計方法もよくわからない。とはいえ今から勉強するのも{癪|しゃく}な話だ。不貞腐れたまま年齢だけを重ねていった。

 これから話すのは、そんな僕に訪れた「電子書籍元年」の出来事だ。実のところ「電子書籍元年」がいつを指すのかは諸説ある。一九九八年の電子書籍コンソーシアムの頃や、リブリエ、シグマブックが発売された二〇〇三〜二〇〇四年頃を指すこともある。どちらも僕の知らない過去の話だ。最近ではタブレットや電子ペーパー端末が相次いで登場した二〇一〇年を指すことが多い。まだ「電子書籍元年」は来ていないという人もいる。人それぞれの「電子書籍元年」があっていいと思う。僕の「電子書籍元年」は二〇一〇年。

 二〇一〇年一月二十日、僕は勤務先を早退して日本電子出版協会(以下、JEPA)を訪ねていた。日本の電子出版の総本山みたいな名称の団体。実際は一般書よりも電子辞書などに馴染みが深い団体なのだけれど、僕がそれを知るのはもう少し後の話。だからこの時はやたらと緊張していた。出版の世界とはまったく縁のない人生だったから。

 僕が呼ばれた理由は、僕が前の年に電子出版物の標準フォーマットEPUBの仕様書を勝手に日本語訳してウェブ上に公開していたためだ。誰もが自由に本を作って誰かに届けることのできる世界に憧れがあった。偶然ニュース[^sony-epub]で知ったEPUBはまさにそのためのフォーマットに思えた。しかしGoogleでEPUBを調べた時にヒットした日本語記事は十件にも満たなかった。日本語の資料を公開しておけば同じ理想を持った誰かを手助けできるかもしれない。そう思ったのだ。仕様書を読むのも翻訳するのも何もかもが初めての体験だったが、少しばかり誰かの役に立つようなことがしてみたかった。一方、JEPAでは前年の十一月にEPUB研究会を発足。EPUBの普及啓蒙と日本語処理の推進活動を開始していた。そして関係者のツイッターを通じて僕にコンタクトがあった。

「EPUBで縦書きができるようにしよう」

 この日、主催者の下川和男さん(JEPA副会長)が語った内容を一言で表せばそういうことになる。米国でシェアを高めているEPUBだが、縦書きやルビといった日本語のレイアウトには課題があった。そこでEPUBを策定する団体IDPF(国際電子出版フォーラム)に対応の要望を出そうというのだ。協力を求められた僕はEPUB研究会の一員となった。

 それから一週間後の一月二十七日。かねてより電子書籍ビジネスへの参入が噂されていたアップルがタブレット端末iPadを発表する。同時に電子書籍ストアであるiBook Store(現iBooks Store)も発表された。そこで使われるフォーマットはEPUB。普段三十くらいのアクセスしかなかった僕のブログはこの日三千ほどのアクセスを記録した。

はじめに

 ^20^代の頃はゲームばかりやっていた。1プレイ^50^円のゲーセンなら^300^円で半日は潰せる。人と関わりたくはないので対戦プレイはしない。いつでも一人プレイ。家ではRPGやシミュレーションゲーム。こまめに経過をセーブする完璧志向。気に入らないことがあれば即リセットしてやり直す。失敗を経てプレイするのは馬鹿馬鹿しい。^30^歳を過ぎても僕は自分の人生の{躓|つまづ}きを受け入れられずにいた。

 六年半かけて大学を出たが就職先が見つからない。アルバイト、派遣社員を経てIT業界の小さな会社に潜り込んだ。そこから通信系や金融系のプロジェクトに一人きりで派遣される。コンピューターに興味があったわけではない。他に仕事がなかっただけだ。自分に合った職業には思えない。学ぶ機会がなかったからプログラムは書けない。システムの設計方法もよくわからない。とはいえ今から勉強するのも{癪|しゃく}な話だ。不貞腐れたまま年齢だけを重ねていった。

 これから話すのは、そんな僕に訪れた「電子書籍元年」の出来事だ。実のところ「電子書籍元年」がいつを指すのかは諸説ある。一九九八年の電子書籍コンソーシアムの頃や、リブリエ、シグマブックが発売された二〇〇三〜二〇〇四年頃を指すこともある。どちらも僕の知らない過去の話だ。最近ではタブレットや電子ペーパー端末が相次いで登場した二〇一〇年を指すことが多い。まだ「電子書籍元年」は来ていないという人もいる。人それぞれの「電子書籍元年」があっていいと思う。僕の「電子書籍元年」は二〇一〇年。

 二〇一〇年一月二十日、僕は勤務先を早退して日本電子出版協会(以下、JEPA)を訪ねていた。日本の電子出版の総本山みたいな名称の団体。実際は一般書よりも電子辞書などに馴染みが深い団体なのだけれど、僕がそれを知るのはもう少し後の話。だからこの時はやたらと緊張していた。出版の世界とはまったく縁のない人生だったから。

 僕が呼ばれた理由は、僕が前の年に電子出版物の標準フォーマットEPUBの仕様書を勝手に日本語訳してウェブ上に公開していたためだ。誰もが自由に本を作って誰かに届けることのできる世界に憧れがあった。偶然ニュース[^sony-epub]で知ったEPUBはまさにそのためのフォーマットに思えた。しかしGoogleでEPUBを調べた時にヒットした日本語記事は十件にも満たなかった。日本語の資料を公開しておけば同じ理想を持った誰かを手助けできるかもしれない。そう思ったのだ。仕様書を読むのも翻訳するのも何もかもが初めての体験だったが、少しばかり誰かの役に立つようなことがしてみたかった。一方、JEPAでは前年の十一月にEPUB研究会を発足。EPUBの普及啓蒙と日本語処理の推進活動を開始していた。そして関係者のツイッターを通じて僕にコンタクトがあった。

「EPUBで縦書きができるようにしよう」

 この日、主催者の下川和男さん(JEPA副会長)が語った内容を一言で表せばそういうことになる。米国でシェアを高めているEPUBだが、縦書きやルビといった日本語のレイアウトには課題があった。そこでEPUBを策定する団体IDPF(国際電子出版フォーラム)に対応の要望を出そうというのだ。協力を求められた僕はEPUB研究会の一員となった。

 それから一週間後の一月二十七日。かねてより電子書籍ビジネスへの参入が噂されていたアップルがタブレット端末iPadを発表する。同時に電子書籍ストアであるiBook Store(現iBooks Store)も発表された。そこで使われるフォーマットはEPUB。普段三十くらいのアクセスしかなかった僕のブログはこの日三千ほどのアクセスを記録した。

はじめに

 二〇代の頃はゲームばかりやっていた。1プレイ五〇円のゲーセンなら三百円で半日は潰せる。人と関わりたくはないので対戦プレイはしない。いつでも一人プレイ。家ではRPGやシミュレーションゲーム。こまめに経過をセーブする完璧志向。気に入らないことがあれば即リセットしてやり直す。失敗を経てプレイするのは馬鹿馬鹿しい。三〇歳を過ぎても僕は自分の人生の{躓|つまづ}きを受け入れられずにいた。

 六年半かけて大学を出たが就職先が見つからない。アルバイト、派遣社員を経てIT業界の小さな会社に潜り込んだ。そこから通信系や金融系のプロジェクトに一人きりで派遣される。コンピューターに興味があったわけではない。他に仕事がなかっただけだ。自分に合った職業には思えない。学ぶ機会がなかったからプログラムは書けない。システムの設計方法もよくわからない。とはいえ今から勉強するのも{癪|しゃく}な話だ。不貞腐れたまま年齢だけを重ねていった。

 これから話すのは、そんな僕に訪れた「電子書籍元年」の出来事だ。実のところ「電子書籍元年」がいつを指すのかは諸説ある。一九九八年の電子書籍コンソーシアムの頃や、リブリエ、シグマブックが発売された二〇〇三〜二〇〇四年頃を指すこともある。どちらも僕の知らない過去の話だ。最近ではタブレットや電子ペーパー端末が相次いで登場した二〇一〇年を指すことが多い。まだ「電子書籍元年」は来ていないという人もいる。人それぞれの「電子書籍元年」があっていいと思う。僕の「電子書籍元年」は二〇一〇年。

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 二〇一〇年一月二十日、僕は勤務先を早退して日本電子出版協会(以下、JEPA)を訪ねていた。日本の電子出版の総本山みたいな名称の団体。実際は一般書よりも電子辞書などに馴染みが深い団体なのだけれど、僕がそれを知るのはもう少し後の話。だからこの時はやたらと緊張していた。出版の世界とはまったく縁のない人生だったから。

 僕が呼ばれた理由は、僕が前の年に電子出版物の標準フォーマットEPUBの仕様書を勝手に日本語訳してウェブ上に公開していたためだ。誰もが自由に本を作って誰かに届けることのできる世界に憧れがあった。偶然ニュース[^sony-epub]で知ったEPUBはまさにそのためのフォーマットに思えた。しかしGoogleでEPUBを調べた時にヒットした日本語記事は十件にも満たなかった。日本語の資料を公開しておけば同じ理想を持った誰かを手助けできるかもしれない。そう思ったのだ。仕様書を読むのも翻訳するのも何もかもが初めての体験だったが、少しばかり誰かの役に立つようなことがしてみたかった。一方、JEPAでは前年の十一月にEPUB研究会を発足。EPUBの普及啓蒙と日本語処理の推進活動を開始していた。そして関係者のツイッターを通じて僕にコンタクトがあった。

「EPUBで縦書きができるようにしよう」

 この日、主催者の下川和男さん(JEPA副会長)が語った内容を一言で表せばそういうことになる。米国でシェアを高めているEPUBだが、縦書きやルビといった日本語のレイアウトには課題があった。そこでEPUBを策定する団体IDPF(国際電子出版フォーラム)に対応の要望を出そうというのだ。協力を求められた僕はEPUB研究会の一員となった。

 それから一週間後の一月二十七日。かねてより電子書籍ビジネスへの参入が噂されていたアップルがタブレット端末iPadを発表する。同時に電子書籍ストアであるiBook Store(現iBooks Store)も発表された。そこで使われるフォーマットはEPUB。普段三十くらいのアクセスしかなかった僕のブログはこの日三千ほどのアクセスを記録した。

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