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英語学習論

英語学習論

第 Ⅰ 部 英語運用力の本質と学習戦略

  • 母語話者は小学校入学までに 17000 時間以上の英語に触れ、大学に入学するまでに 50000 時間の英語経験を積むとされる
  • 日本人は中高で 3000 時間の英語に触れるだけ

1.1 知識の二重螺旋:宣言的知識と手続き的知識

  • 知識には二つのタイプが存在する
  • 言葉で内容を説明できる宣言的知識 (declarative knowledge)
    • explicit knowledge (形式知・顕在知)と呼ばれることもある
  • 言葉では説明できないがたしかに脳内にある手続き的知識
    • implicit knowledge (暗黙知・潜在値)と呼ばれることもある
  • 手続き的知識は立ち止まって考えなくても、はっきりと詳細を意識しなくてもできるレベルを約束する知識
  • 宣言的知識は knowing what
    • その what 以外に使えない
  • 手続き的知識は knowing how
    • 一般化 (generalize) しやすい
    • 使用に柔軟性が出る (flexible)
    • 様々な状況で使用できる (universal)
  • 訳読法に代表される日本の学校英語は言葉で説明できる宣言的知識が圧倒的
  • 宣言的知識は意図的な努力によって短期間で獲得できる
  • 手続き的知識は無意識のうちに獲得され、長期間かかる
  • 日本人が流暢な英語を使えないのは、手続き的知識がないから

1.2 流暢さと自動性

  • 典型的な英語学習者の英語力は、以下の二側面から測ることができる
    • どれだけの知識を学んだか
    • 学んだ英語をどれだけ使いこなせるか
  • 学習者の流暢さには二種類ある
    • fluency: 現有戦力を活用する能力
    • FLUENCY: 年齢や学歴に相応の単語・表現・文法の知識があり、それらを使いこなしてネイティブスピーカーと対等にコミュニケーションがとれる
  • 現在の宣言的知識に見合った fluency を常に獲得し、宣言的知識と手続き的知識のバランスをはかりながら FLUENCY に近づいていくのが一番効率の良い方法
  • 宣言的知識のみを優先的・排他的に獲得させる日本の典型的な英語教育は非常に非効率的
  • FLUENCY と fluency の究極は自動性 (automaticity)
    • 懸命に努力しなくても考えが自動的に言語化できること
  • 自動性の証
    • fast (処理が速い)
    • ballistic (止められない)
    • load independent (情報処理量に影響されない)
    • effortless (努力を要しない)
    • unconscious (無意識的)

1.3 流暢さ養成の 4 要素

  • 筆者が流暢さ養成の 4 要素と呼んでいるもの
    • 十分な宣言的知識
    • 大量学習
    • 反復学習
    • 時限訓練
  • 十分な宣言的知識
    • 単語や慣用句を含む様々な表現は、まず丸覚えから入るしかない
    • 単語はほぼ一万語必要とされるのに対し、典型的な受験生は 3000 語から 4000 語レベルの語彙
    • put up with のようないわゆる受験熟語的な慣用句に加え、共起と呼ばれることもある前置詞と動詞や名詞のコンビネーションや形容詞と名詞のコンビネーションなどの表現も宣言的知識として身につけておく必要がある
    • 宣言的知識のベースがないとインプット処理もアウトプットのための前処理もできない
    • 言語に関する手続き的知識の獲得には幼児期のような明らかな敏感期・最適期がある
    • 宣言的知識一般にはアルツハイマーにでもならないかぎり、突出した敏感期はなく、むしろ大人の方に部がある
    • 大人の場合には単語の丸暗記から始めるのが一番効率の良い方法なので、これに関しては受験勉強的な猛勉強を続ける
    • word family とは、活用形や派生系を加えてワンセットと考えた、基本的な意味を共有する単語のグループ
    • とりあえずは 10000 の word families の宣言的知識を目指す
    • 文法の宣言的知識については、中学・高校で学んだもので十分
  • 大量学習
    • 自動性が手続き的知識を要求し、手続き的知識は大量学習によってのみ獲得できる
    • 直接的な練習は、宣言的知識の定着に役立っても、手続き的知識の養成には結びつかない
    • 手続き的知識は、内在化しようとしている事項以外の側面に焦点をあてて言語活動を行っているときに、付随的に手に入るもの
      • 意味を表し伝えることを主目的とした活動の中で、必要に応じて使うことによって内在化させる
    • 徐々に脳に浸透させるような訓練法しかないので、手続き的知識の獲得には大量のインプットとアウトプットが必要であり、それなりに時間もかかる
  • 反復学習
    • 意味を伝えることに主眼を置く大量学習の必要性の結果として、手続き的知識の構築には同じタイプの構造・内容に何度も触れる必要がある
    • よく似た教材や学習法による反復学習を意識的に行うことで、これが自動的に保証される
    • 同じ文を 5 回ずつ言うといった人工的な反復ではない
  • 時限訓練
    • 時限訓練とは、アウトプットに時間制限をかけるもの
      • 自分のペースで英語を使って、所定の内容を理解したり発信したりするのにかかる時間を測る計時訓練とは大きく異なる
    • 主流は時間に上限を設ける fluency 訓練だが、FLUENCY 養成のためには下限を設ける訓練も有効
    • 上限の設定
      • あらかじめ発信すべき量・内容の目安があって、それを所定の制限時間内にやりとげようとするもの
        • 例えば、お題を与えられてから 15 秒考えて 45 秒しゃべる 15/45 訓練
      • 練習の所要時間がはっきりする
      • ネイティブスピーカーのスピードと容易に比較できる
        • テレビのアナウンサーは毎分 150 語、ネイティブの友人同士なら 200 語以上は平気、ディベートや競売時の早口は 350 語から 400 語
        • 200 語を大きく超えるとネイティブでも聴解訓練が必要になる
        • まず 150 語くらいを目安にする
      • 集中力が高まり、メリハリが付き、自分に外圧が加えられる
        • 自分のレベルより少しだけ上を目指す、ほんの少しずつでも能力を積み上げる
        • 語彙・表現などを含む豊富な宣言的知識、スピード、走りながら考える並列処理の三つが要求され、手続き的知識を動員するしかない
    • 下限の設定
      • 英語学習者は、ネイティブと比べると、短時間は話せても長時間話すとグダグダ感が増していく
      • 長い良い話をする練習そのものもやるしかないので、2 分以上とか 3 分以上とか、長めの発話練習もする

1.4 熟成から覚醒へ

  • 著者の意見として、手続き的知識について広く信じられてることが 3 つある
  • 熟成
    • 継続学習と矛盾するようだけど、練習をしていない間にも脳内でなんらかの変化・再編が進行している可能性がある
  • 量子飛躍
    • 全然伸びない期間が続いた後に急に伸びる
    • 長期戦を想定して続けることが大事
  • マスキング
    • 宣言的知識が足りないことにより手続き的知識がマスキングされる(覆い隠される)
  • 覚醒
    • 熟成を経て量子飛躍的に fluency/FLUENCY の次のレベルへ進むこと
  • 大人の英語学習が必ずしも成功しないのは、途中で投げ出すから
  • expertise の達成には、10 年および 1 万時間というマジックナンバーがある
    • 1 日 3 時間で 10 年
    • 1 日 3 時間の練習確保は大変なので、計時システムを取り入れることが大事

1.5 記憶について:心理学の領域から

  • 処理の深さ:Levels of Processing(処理水準)
    • 記憶が作られるときの処理モードによってその強さや持続性が決まるというもの
    • 単語であれば、発音やスペリングに基づく処理よりも、意味を介した処理によって生まれた記憶のほうが強く長持ちする
  • 利用しやすい記憶:Transfer Appropriate Processing(転移適切性処理)
    • 記憶ができたときと同じ状況だとその記憶が呼びさまされやすい
    • 手続き的知識の構築訓練は、実際の使用状況を反映したものでなければならない
      • 和文英訳ではなくお題を与えられて自分の意見についての英作文をするとか
      • 十分に時間をとって内容を頭の中で組み立ててから話し始めるのではなく、まず話し始めて走りながら次の内容を考えるとか
  • 記憶の違いを判断:Destinctive Processing
    • 記憶を組織化するには相違点の認識も必要
      • 類似性も大きな役割を果たすが、それだけに重きをおいた処理は、共通した属性を持った記憶を混同しやすい
    • 上級学習者では、既存の豊富な宣言的および手続き的知識が、初心者にはとうてい分からない共通性と相違点の認識を助ける

1.6 英語教育・学習の四重螺旋

  • 教育・学習の四重螺旋
    • Meaning-Focused Input(意味重視のインプット)
    • Meaning-Focused Output(意味重視のアウトプット)
    • Language-Focused Learning(言語形式の学習)
    • Fluency Development(流暢さの養成)
  • この 4 つとは別に、Task-on-Time(総学習時間)が一番重要
  • Meaning-Focused Input(意味重視のインプット)
    • 聴解と読解に関する訓練
    • 目的
      • インプットの処理練習
      • インプット処理に使える構文や文法や語彙アクセスの手続き的知識の獲得
      • 語彙・表現に関する知識の深化と新しい語彙や表現の獲得
    • どんどん処理できるレベルのインプットを扱うのが基本
      • 出てくる単語の最低でも 95%、より理想的には 98% が既習である教材を使うべき
    • 聴解に関しては、98% の単語が聞いてわからなければいけない
      • 多くの日本人には最初からノーマルスピードは到底無理なので、スピードを調節した教材を使う
    • たとえば宣言的知識として単語に、文脈が十分に分かっている文内で再会することによって、理解の深化を可能とする
  • Meaning-Focused Output(意味重視のアウトプット)
    • 話す練習と書く練習
    • 目的
      • アウトプットの処理練習
      • アウトプット処理に使える構文や文法や語彙アクセスの手続き的知識の獲得
      • 語彙・表現に関する知識の深化と新しい語彙や表現の獲得
    • インプット処理に対して、アウトプット処理ではたった一つの単語やたった一つの表現がわからないだけで、装置全体が緊急停止する
      • 弱点の前景化
    • 弱点や自分がまだ知らないことやできないことを認識し、意識的・重点的にその部分の練習をするのは、大人が持っている数少ない優位点
    • 弱点に気がつけば、ネイティブスピーカーや他の学習者がどのようにそれを表現するのかを見つけるために呼んだり聞いたりするようになる
      • read like a writer, listen like a speaker
    • アウトプット活動は、インプット処理よりも深く複雑であり、より強く印象的な知識・記憶の生成に貢献する
    • 和文英訳ではなく、自分の気持を直接英語で表現したり、お題を与えられてそれについて作文・口頭作文をしたりすべき
    • アウトプットでは知識不足が露呈するので、練習の後に時間を取って新知識を仕入れる
      • 調べながら書くのではなく、後から時間をとる
  • Language-Focused Learning(言語形式の学習)
    • 言語についての宣言的知識を意識的に増加させる活動
      • 語彙・表現・文法などが中心
      • 日本人がやりなれた受験勉強的なところもある練習
    • 以下を心がければ効果も効率も向上する
      • 内容を深く考えながら取り入れる
      • ここで学んだ内容に他の三つで頻繁に出会うようにする
      • 定期的に復習しながら先に進む
        • 記憶の崩壊は指数関数的であって、時間が経つにつれて復習と復習の間の時間を長くしていくのが良い
    • 目的
      • 手続き的知識を直接的に高める
        • 詳しいメカニズムはわかっていない
      • 言語についての sensitivity や consciousness が高まって後の効率学習につながる
      • 言語を系統的に理解するのに役立つ
      • 言語学習・処理に示唆を与える
  • Fluency Development(流暢さの養成)
    • ここでいう流暢さは fluency であって、FLUENCY ではない
    • 現有戦力を最大限に使いこなす練習で、読・書・聴・話をカバーする
    • 意味を伝えることが活動の中心
    • 宣言的知識としてはすでに知っているもの、ほぼ 100% 近く分かっているものを扱う
    • 時間制限・計時などにより、速い処理を促す
    • 大量学習を心がける
    • 流暢な処理はより良い伝達内容の理解に結びつく
      • 遅いスピードで精読するほうが、どんどん読むより内容理解が乏しいという状況すら起こりうる
    • 同じ教材を反復的に使うのも、次々と違った教材を使っていくのも、母語での読解訓練では効果は同じであった
      • 外国語学習にも当てはまるように見えるが、筆者の見解だと別個にどちらも大量学習するのが有意義かつ必要
      • スピーキングでは、練習量が同じでも反復練習のみが手続き的知識の養成につながったという結果も出ている
  • 実際には読・書・聴・話の 4 技能ごと、または教材ごとの練習になる
    • 四重螺旋をそれぞれはっきりと分けて練習するのはかえってやりにくいので

1.7 精と多の二重螺旋

  • 実際の練習に使用する、よりシンプルなフレームワーク
    • Intensive Exercise: 精読のように詳細に注意をはらう練習 (Detail-Oriented)
    • Extensive Exercise: 多読のように量をこなす練習 (Volume-Oriented)
  • Intensive Exercise は宣言的知識の獲得に貢献し、Extensive Exercise は fluency の養成に貢献する
  • Intensive Exercise には自分の英語のレベルから少し上のレベルの教材を使う
  • Extensive Exercise は自分のレベルから 1,2 段階下げたものを使う

1.8 弱点の脳内データベース:DEAR と拡張 DEAR

  • DEAR は、自分がよく犯す間違い (Errors) やどれが正しいのか革新が持てない事柄 (Ambiguous Representations) の脳内データベース
  • 誤りだとわかっていても誤りを犯すのは手続き的知識の問題
  • 意識していれば Corrective Feedback(修正フィードバック)の効果が大きい
  • 拡張 DEAR
    • ふだんから言いたいが英語ではうまく表現できないことの脳内データベース
    • WELL (Words and Expressions to be Learned Later)

第 Ⅱ 部 結果を出した学習法

2.1 大人の英語学習:「かくしき」を重んじる

  • かくしき
    • 計画的
    • 本格的
    • 多角的
    • 組織的
    • 意識的
    • 形式的

2.2 語彙の強化

  • 文法は高校の英文法を覚えていれば十分
  • 英熟語も受験時代に覚えたものでとりあえず十分
    • 頻出表現や英語らしい言い回しなどは、インプットの大量処理で実際出会うことで学んでいくのが一番
  • 英熟語ではなく、go on や hold out のような定形表現を phrasal expressions という
  • 単語は、7,000 から 10,000 word families くらいは覚えるべき
  • 受験時代に 3,000 から 4,000 word families はできているはず
  • おすすめ単語集
    • JACET 8000 英単語

2.3 聞く

  • スピードが速すぎたり、内容が難しすぎたりしてはいけない
  • リスニング練習は処理力養成が主眼
  • リスニング教材の四つの属性
    • スピード
    • 語彙レベル
    • スクリプトの有無
    • 長さ
  • リスニング練習の目的
    • 処理能力(fluency)の養成
    • 新しい語彙・表現・構文の獲得
      • リスニングよりリーディングのほうがずっと効果的
  • 基本教材はスクリプト付きの、語彙レベルの低い、スピードの遅い教材
  • 音声編集ソフトを用意することをおすすめ
    • Audacity
    • Sound Forge
      • 有償
  • オススメ教材(易しい順)
  • 内容が全部聞き取れて遅いと感じるなら次のレベルに進む
  • 実質的には、TOEFL の問題がリスニング練習教材の最高峰
  • TOEFL iBT には 3 から 5 分くらいの長さの会話とレクチャー、TOEFL PBT には 10 秒程度の会話と 1 分強の長さの会話とショートトークがある
  • 日本人の多くは 10 秒程度の会話の後に答える問題が苦手
    • 長い聴解問題が一番得意
    • 聴解力は音をとらえる力、センテンスレベルの意味理解、全体の意味理解の三つに分けられ、日本人は音そのものをとらえる力が不足しているから
  • すべての側面がそろってこその聴解なので、全タイプを試すのがいい
  • まず全体を通して聞き、その後で部分部分に分けて少しずつ聞いていく
    • 全体も部分も必要に応じて複数回聞く
  • 全体を聞くフェーズは意味処理能力・手続き的知識・fluency の訓練
  • わからない部分をスクリプトで確認する
  • 音が取れない原因は三つある
    • 単語の発音の宣言的知識がなかったり間違ってたりする
    • 音を取り込んで処理するスピードが遅い
    • 前後の単語・音との兼ね合いによる発音の変性についていけない
  • まとめとして全体を聞く、スクリプトを読むことを納得がいくまで繰り返しやる
  • スクリプトのない教材
    • Diversity や Comprehensiveness, Transfer Appropriate Processing の観点からもスクリプトのないリスニングも大切
    • VOA Learning English Broadcast
      • 毎日 30 分放送しており、最初の 10 分くらいにニュースが入っていてスクリプトがない
  • TOEFL レベルが手続き的知識として完成するまで続ける
  • 次の質問に「はい」と答えるうちは宣言的知識に頼っていて、手続き的知識化されていない
    • 頭の中で高速で日本語に訳している
    • メモをとらずにしっかり聞くほうが、設問によく答えられる
    • 単純な手作業でも聴解に影響を与える
    • 内容の違う簡単な英語を読みながらの聴解はほぼできない
  • リスニングは最後まではっきりとネイティブとの差がある
    • スピーキングは自分の知っている範囲の英語でなんとでも表現できる
    • 聞くより話すほうが難しいうちはまだまだ英語学習の初心者
  • 多聴の研究はあまりないが、多読と多聴は脳内での意味処理も似通っていると考えられる
  • 多読の研究
    • 10 万語を呼んだ時点で訳さずに読むことに慣れる
    • 30 万語から 100 万語を読んだ時点で自身の読解力に手応えを感じ TOEIC のスコアがはっきりと伸びる
    • 300 万語を読むと海外に一年留学した人と同じ程度の効果が出た
  • 多読はネガティブな効果がまったく見当たらない数少ない勉強・教育法の一つ
  • 多読と多聴を同時進行させることで、大量学習と反復学習になる
  • 多読も多聴も毎年 100 万語がおすすめの練習量
    • それぞれ毎日 30 分ぐらい
  • 教材紹介

2.4 読む

  • リーディングでは音処理の困難さがないので、処理能力の養成とともに、単語・表現・構文などを含む宣言的知識の獲得も目的となる
  • この本の訓練方式はリスニングとスピーキングがメインだけど、リスニング後にスクリプトを読むことがリーディングの大切な部分になる
    • 反復学習の確保
  • より純粋なリーディングも入れる
  • graded readers
    • 語彙を絞り、構文も単純化した学習者用のシリーズ
    • Oxford Bookworms シリーズ
    • Penguin Readers
    • Macmillian New Wave Readers
  • 英語多読研究会のサイト
  • 語彙的には 95 から 98% 分かるべきというのは変わらない
  • より実力の高い人はリスニングのときと同様に TOEFL の問題が使える
  • さらに進めばネイティブ用のありとあらゆる英語に到達する
  • ネイティブと内容的に同レベルのものが読めることと同じスピードで読めることは別物
  • 「英語力が一定のレベルに到達すれば、母語での読解力が英語の読解力に移行可能になる」という仮設がある
  • 精読で宣言的知識の獲得を行う
  • 重点はあくまで多読
    • fluency こそが典型的な学習者にもっとも欠けているスキル
    • 多読は精読的要素が入るが、精読には多読的要素は入らない
  • 精読おすすめ教材
    • TOEFL iBT Reading Section
    • TOEFL Essays
    • GRE Analytical Writing Issue Topics
    • GRE Analytical Writing Argument Topics

2.5 話す

  • アウトプットはライティングよりスピーキングを優先すべき
    • 筆記用具もコンピュータもいらない
    • 量が稼ぎやすく大量学習に向いている
    • ライティングには行ったり来たりしながら推敲を重ねながら自分のペースでできてしまう
    • 発音の宣言的知識・手続き的知識の欠如に気づかせてくれる
  • 流暢さの養成にはスピーキングを訓練の中心に置く
  • 話すの 4 側面
    • 発音・発生
    • 発話
    • 会話
    • コミュニケーション
  • Levelt の発話モデル
    • Conceptualization
    • Formulator
    • Articulator
    • Output
  • スピーチの質を測る基準
    • Fluency
    • Accuracy
    • Complexity
  • 最初にやるべきことは辞書的発音ができるようになること
    • 発音記号を覚える
  • 次に連続的に発音する練習
    • 中学・高校の教科書などの音読
  • 15/45 Exercise
    • お題を与えられた後、15 秒考えて 45 秒しゃべる訓練
    • 筆者は TOEFL 対策も兼ねて 2 種類のトピックを提供している
      • Type Ⅰ は自分に関係のある人・場所・出来事や自分の好みなどに関する問い
      • Type Ⅱ は与えられた二つのオプションの一方を選んでその理由などを述べる課題
    • 筆者作のトピック群
    • ある程度できる人は 45 秒固定に重点を置くことがおすすめ
    • 発展途上の人は時間がかかる状態から 45 秒に近づけていく
  • Free Translation
    • 日本語 6 文で表された内容を 60 秒から 90 秒の英語で言う訓練
      • 和訳ではなく意訳するのがポイント
    • 練習用の日本語文
    • 時間設定を 60 秒から 90 秒にしているのは流暢さと自動性養成のため
  • Picture Task
  • Oral Composition
    • お題を与えられて、それについて口頭作文
    • 2,3 分話し続けるロングトークと、45 秒から 60 秒のミニトークを組み合わせる
      • 訓練の中心はロングトーク
    • ロングトークはしっかりと準備をしたりノート取りをしてから始めて構わない
    • 意識すること
      • 長い沈黙を避ける
      • 間違いに気づく努力をし、簡単なものであればその場で言い直す
      • もっと込み入ったものや間違いだと分かっても正しい言い方はわからない場合、間違いであるという事実を心に留める
      • 正しいかどうか確信が持てない部分は知識があいまいだと意識する
      • 最初はぎこちなくても、終わりの方では流れがよくなり、最後は punchline でまとめられるよう努力する
    • 教材
  • Summary Task
    • インプット処理とスピーキングを合わせた統合的な練習
    • リスニングとリーディングで使った最低でも 1 分の長さのある教材を、45 秒以内でまとめる
  • Pair Work
    • 二人で組んでやる練習
    • 基本形が 2 種類あって、一つは Pair Discussion、もう一つは One-Way-Presentation Task
    • Pair Discussion は与えられたお題についてのディスカッション
      • http://aoitani.net/TOEFL_Speech/Conversation_Questions.doc
        • 筆者が授業で使ってるお題
      • 会話中はパートナーの発話の中の間違いをできるだけ多く見つける努力をする
      • その場で簡単に治せる間違いは割って入って直す
        • here-and-now feedback と言い、効果は折り紙付き
      • 難点もある
        • 二人の fluency レベルが合っていないと活発なやりとりが成立しない
        • 自分の発話のプランニングとの並列処理で相手のミスをピックアップできない
    • One-Way-Presentation Task
      • お題を与えられてそれについて一人が 2,3 分話し、その間もう一人は聞き手に徹する、交代でやる
  • Write and Speak/Write to Speak
    • まず作文をしてから、その内容を今度はしゃべる
    • 二つの目的がある
      • 非常に発話力の弱い人をサポートすること
      • もっとできる人により高度な発話の機会を与えること
  • Recording
    • 自分のスピーチを録音し、聴解のように自らの発話を検証する
    • 主は、どんどんしゃべる練習
  • スピーキングはリスニングも助ける

2.6 書く

  • アウトプットは圧倒的にライティングよりスピーキングを優先すべき
  • しかし、以下の理由でライティングも欠かせない
    • Meaning-Focused Output(意味重視のアウトプット)の一環として
    • 大人の英語力の必須スキルとして
    • 宣言的知識の向上を図る有効なツールとして
  • Transfer Appropriate Processing の観点から、和文英訳ではなく与えられたトピックについての課題作文を行う
  • fluency の向上のため、時限練習を取り入れる
  • トピックは「非常に具体的なもの」と「より包括的なもの」をやるのがおすすめ
  • 具体的なトピック
    • 教材
      • Oral Composition で出てきた、TOEFL Writing Topics
      • GRE の Analyticsl Writing Issue Topics
    • 以下の 3 ステップをワンセットとして練習する
      • 制限時間内にどんどん書く
      • 時間無制限で見直し、自力で直せるものをすべて直す
      • 辞書やネットで調べて、さらに修正を加える
    • 10 分 100 語とか 15 分で 150 語とかが目安
  • 包括的なトピック
    • 「今日は何をしましたか」とか「最近どうですか」とかになる
    • おすすめは、「今日は何をしましたか」を 3 から 5 分間のライティングとそれに続く 1,2 分の Oral Composition を毎晩寝る前にやること
  • スピーキングとライティングの訓練は相互に好影響を与える
  • 共通性があるので、他の日本人の間違いから学ぶことが有効

2.7 スピードの目安:ネイティヴ vs ノンネイティブ

  • 学習者が目指すべき言語使用スピード(毎分単語数)
    • 話す:100 以上
    • 読む:黙読で 250、音読で 150
    • 書く:10
    • 聞く:150
    • 考える:400~
  • ネイティブスピーカーの言語使用スピード
    • 話す:125 ~ 200
    • 読む:250 ~ 300
    • 書く:30
    • 聞く:125 ~ 200
    • 考える:400~

第 Ⅲ 部 言語の進化と脳科学から見た「話す・聞く」の優位性

3.1 ヒトとことば:言語の起源・進化

3.2 なぜスピーキングか?

  • 日本人はスピーキングがまったくできない
    • TOEFL の日本人のスピーキングのスコアは単独世界最下位
  • 京都大学生でもスピーキングは日本人平均と変わらない
  • しかし、日本人でなくてもスピーキングに重点を置くべき
  • スピーキングは英語力の頂点ではなくピラミッドの土台
  • 世界には 7,000 近く言語があるけど、文字のある言語は 750 言語で、残りの 6,200 言語には文字がない
    • 読み書きは副次的なもの

3.3 話し言葉の優位性

3.4 スピーキングとリスニングの連携

  • スピーキングのためのネットワークにはリスニングのためのネットワークの機能が必要不可欠
  • スピーキングのリスニングへの影響は不可避だが、たぶんリスニングにスピーキングが不可欠というわけではない

3.5 音声言語知覚の運動理論

  • 人は音そのものではなく、話者の動作、口周辺の運動を検知しているのではという主張がある

3.6 難しい音の聞き取りとスピーキング回路

  • リスニングが簡単なときにはスピーキングの回路は不要かもしれないが、難しい音や曖昧な音のリスニングにはスピーキングシステムが必要という研究結果がある
  • 子音の連続 (try とか) は日本人だけでなくアメリカ人でも苦手

3.7 スピーキングとリーディング

3.8 視覚情報より聴覚情報

  • 人間は黙読中でも頭の中では静かに音読をしているらしい

3.9 難読症と音韻処理の欠陥

3.10 手話も話し言葉

  • 手話のインプット理解は、健常者が音・声の類似性を聞き分ける際に使用する音の回路とよく似た脳の領域が使われている

3.11 ネイティブも音韻情報にたよる

3.12 書き言葉の話し言葉への影響

3.13 思考・概念と言語

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