「弟よ」
「なんだ姉」
「ゲームの面白さとは何だと思う?」
「ほう」
「何が面白いのだと思う?」
「難しいテーマだな」
「何を面白いと思うかは人それぞれだろう……しかし大勢に楽しまれるゲームもあれば、多くの人にクソだと思われるゲームもある。なんらかの傾向や分類可能な特徴があるのではないか」
「だろうな」
「そこで、自分でゲームを考えた。これを題材に話し合いたいと思う」
「どんなゲームだね」
「『右クリックするとフォルダができる』ゲームだ」
「……」
「名前は『フォルダメーカー』、ゲームとは何かという根元的テーマに肉薄する問題作だ」
「……姉よ」
「なんだ」
「それは……ゲームではない……」
「なぜだ?」
「なぜと言われても」
「ユーザーの入力に対して反応するという時点で最低限の条件は揃っているぞ。どうしてゲームではないんだ」
「ツールではないのか」
「ツールではない。フォルダといってもOS上のフォルダではなく、フォルダメーカーの中だけに存在するフォルダで、特に便利なことはない」
「酷いな……」
「弟よ、君が『フォルダメーカーはゲームではない』と感じたことはとても重要だ。ゲームではないものが定義できれば、自ずとゲームの定義にも近付く。そして、フォルダメーカーがゲームでないならば、どんな要素を足すあるいは引くことによってゲームにそして面白いゲームになりうるのか。それを考えれば、自然と『ゲームの面白さとはなにか』も見えてくるはず」
「フォルダメーカーにそんな壮大な目的があったのか」
「あったのだ……さぁ、例えばどんな要素を足せばよいと思う?」
「そうだな……あぁ、例えば」
「ふむふむ」
「『右クリックするとフォルダができるし、マウス移動と左クリックを使ってスーパーマリオができるゲーム』はどうだ」
「マリオか」
「マリオだ」
「それは『スーパーマリオができるフォルダメーカー』というより『右クリックするとフォルダができるスーパーマリオ』だな?」
「ダメか」
「ダメではないが雑だ」
「確かに」
「もっとフォルダメーカーらしく……右クリックするとフォルダができる部分をメインに」
「そこは譲れないのか」
「譲れないな。その点はフォルダメーカーが一番最初に獲得したゲームらしさである『ユーザー入力とそれへの応答』だからな」
「そこを獲得したと表現するか」
「するさ。フォルダメーカーの前身……ノットフォルダメーカーとでもいうべきか……そこでは右クリックしても何も起こらなかったからな。0が1になるというのはすごい進化だぞ」
「ノットフォルダメーカーはそれこそ本当にゲームではないな……ノットフォルダメーカーは考慮する必要はないのではないか」
「しかし何事もスタート地点はゼロではないか」
「姉よ……例えば聖書は、神が光を創るところから始まり、それより前はないのだ。神が『光あれ』と言うのがスタート地点だ」
「つまり……神が『フォルダあれ』と……?」
「いやそれは言わなくていい」
「神も『やっべファイルが先だったわ』と思っただろうな」
「いやまず光だろう」
「マウスもないと右クリックできん」
「神がフォルダメーカーを創った話はやめよう。フォルダメーカーのフォルダを生かして面白くする話だ」
「そうだった。例えば、右クリックでできるフォルダに、可愛い女の子のイラストが入っているというのはどうだ」
「おっ……急にゲームらしくなったな」
「何種類ものフォル娘がいてランダムに出てくる」
「フォルむす」
「これでフォルメカは『キャラクター性』というゲームらしさを獲得した」
「フォ・ル・め・か」
「キャラクター性はゲームに必須ではないが、かなり重要だろう。クッキークリッカーも、サポートのキャラクターがオバアチャンでなければあれほど話題にはならなかったはずだ」
「俺はキャラクター性にはあまり興味はないかな……CUIのゲームしてるし……」
「しかしユーザーがゲームの概念や要素を把握するためにはキャラクター性は必要だ。ただの記号だったとしても『○は安全、×は危険』というようなイメージはある。これも一種のキャラクターだ」
「なるほどな」
「キャラクター性を獲得したフォルダメーカー……もはや完全に面白いゲーム」
「いやそれはない」
「ぬ、なぜだ」
「まず第一に、フォルダを作るのが簡単すぎる。すぐに全種類のフォル娘を集められる。そして第二に、フォルダを作ったらそれで終わり。これはゲームではなく作業だ」
「作業ゲーか」
「作業ゲーというより作業だ」
「ふむ……では、フォルダの中にフォルダをしまえるようにしよう」
「いわゆる強化か」
「しかし戦艦なら戦いもするだろうが……フォルダは戦わないな」
「フォルダが女の子なのは気にしないのにそこは気にするのか」
「そうだ!女の子ではなくモンスターにするのはどうだ?モンスターなら戦っても不思議はないし、フォルダの中にフォルダをしまう概念を勝ったフォルダが相手のフォルダを食べると考えられる。タイトルはモンスターフォルダー」
「モンフォル」
「キャラクター性に加えて育成要素と戦闘要素を獲得したな。あと大勢の仲間と一緒に戦う協力プレイ要素も入れよう」
「姉よ……どうして君はすぐに人気ゲームをパクるんだ」
「パクりというか、人気ゲームを紐解きその要素を吟味して加えることでゲームそのものの面白さを……」
「それはわかるがもう少し紐解け……今のままではパクってるだけだ」
「ばれたか……」
(俺屍2体験版のDLが終わったため与太話終了)