2023年3月16日(木)発行
16190 FEDERAL REGISTER, VOL. 88, NO. 51
RULES AND REGULATIONS
37 CFR PART 202
アクション:方針表明
概要:著作権局は、人工知能技術の使用により生成された素材を含む著作物の審査および登録に関する実務を明確にするために、この方針表明を発表します。
日付:この方針表明は2023年3月16日に発効します。
FOR FURTHER INFORMATION CONTACT: Rhea Efthimiadis, Assistant to the General Counsel, by email at
meft-AT-copyright.gov or telephone at 202–707–8350.
著作権局 (以下、当局)は、著作権登録制度を運用し、著作権および関連する事項について議会、その他の機関、および連邦の司法機関に助言することを任務とする連邦機関です。1870年の創設以来、著作権登録を監督してきたため、「著作権のある作品とない作品の区別」に関して、相当の経験と専門知識を培ってきました。当局は、著作権法によって著作物の登録を求める申請者が利用する申請手法を確立する権限を与えられています。同法は一定の登録への最低要件を定めていますが、当局は「著作権の存在、所有権、または存続期間」を評価するために追加情報が必要であるかを判断することもできます。何故なら、当局は毎年約50万件の登録申請を受理しているため、登録において常に新しい傾向が見られ、申請書にて開示を求める情報の修正や拡大が必要となる場合があるからです。
近年、人工知能 (以下、AI)技術を駆使して創作物を作り出すことができるようになりました。この技術は、膨大な量の人間が作成した既存の作品を「学習」し、その学習から得られる推論を利用して新しいコンテンツを生成します。システムによっては、「プロンプト」と呼ばれるユーザーからのテキスト指示に応答して動作するものもあります。その結果と得られる出力はテキスト、ビジュアル、オーディオのいずれでもよく、学習させた素材に基づいてAIによってそのデザインが決定されます。この技術はしばしば「生成AI」と呼ばれ、生成された素材が著作権で保護されるかどうか、人が作成した素材とAIが生成した素材の両方からなる作品が登録されるべきかどうか、登録しようとする出願人が当局に提供すべき情報は何かという問題を提起します。
これはもはや仮定の問題ではなく、当局はすでにAIが作成した素材の著作権を主張する登録申請を受理し、審査しています。例えば、2018年、当局は申請者が「機械上で動作するコンピュータアルゴリズムによって自律的に作成された」と説明した視覚的作品の申請を受理しました。申請書に記載された申請者の説明に基づき、審査官はその作品に人間の著作物が含まれていないと判断したためにこの申請は却下されました。一連の行政不服審査の後、当局の審査委員会は作品に「人間の創造的貢献がない」ために登録できないことを肯定する最終決定を下しました。
さらに最近、当局は人間が創作した要素とAIが生成した画像を組み合わせた作品の登録を審査しました。2023年2月、当局は人間が執筆したテキストとAIサービス「Midjourney」が生成した画像を組み合わせたグラフィックノベルは著作物であるが、個々の画像そのものは著作権で保護することはできないと判断しました。
当局は、AI技術を著作者または共著者として名指ししている、もしくは申請書の「作成者」または「著作権局への注記」のセクションに「作品がAIによって、またはAIの支援を受けて作成された」ことを示す記述を含む他の申請書も受領しています。さらに、他の出願人は、AIが生成した素材を含むことを明らかにしていないものの、作品のタイトルや寄託の「謝辞」欄にAI技術の名称を記載していました。
これらの動向を踏まえ、当局はAIが生成したコンテンツを含む著作物の登録において公的なガイダンスが必要であると結論付けるに至りました。この方針声明は、当局がこのような作品の登録申請に対して著作権法の人的な著作権要件をどのように適用するかを説明し、申請者に指針を提供するものであります。
当局はAIが生成した作品にはこのガイダンスで扱われていない他の著作権問題が含まれていることも認識しています。このような問題を幅広く掘り下げるために当局全体的な取り組みを開始しました。特にAIの学習における著作物の利用やその結果としての生成物の扱いについて、法律がどのように適用されるべきかを含む追加の法律および政策トピックに関する一般からの意見を求める照会通知を今年後半に発表する予定です。
当局の見解では、著作権は人間の創造性の産物である素材のみを保護できることが確立しています。最も基本的なことは、憲法と著作権法の両方で使用されている「著作者」という用語が人間以外を除外していることです。当局の登録方針および規則は、この問題に関する法令と司法上のガイダンスを反映しています。
著作権に関する代表的な裁判において、連邦最高裁は「著作者」へその「著作物」に対して議会が排他的権利を与えた権限を解釈する際に人間以外を除外する文言を使用しています。Burrow-Giles Lithographic Co. v. Saronyの裁判では、写真の無断複製で訴えられた被告が「写真は著作物でも著作者の制作物でもない」代わりにカメラによって作成されるものであるため、議会による写真への著作権保護の拡大は違憲であると主張しました。裁判所はこれに同意せず、憲法の著作権条項は「著作者の独創的な知的観念の代表である限り」写真を著作権の対象とすることを「疑いなく」認めていると判断しました。裁判所は「著作者」を「何事もその起源を負っている者:創始者、製作者、科学や文学の作品を完成させた者」と定義しました。そして、このような「著作者」を人間として繰り返し言及し、著作者を「人」の一種として著作権を「自らの能力または知性による生産物に対する人の排他的権利」と表現しているのです。
連邦控訴裁判所も「著作物」のみに著作権保護を与える著作権法の条文を解釈する際に同様の結論に達しています。第9巡回区連邦控訴裁判所は、「人間以外の霊的存在によって書かれた」言葉を含む本は、「啓示を受けた人間による選択と配置」がある場合にのみ著作権保護の資格を得ることができるとしたのです。また別のケースでは、著作権法が著作者の子、未亡人、孫、寡夫を指しているため、サルがカメラで撮影した写真に著作権を登録することはできないとしました。この用語は「すべて人間を意味し、必然的に動物を除外する」ものだからです。
これらの事例などに基づき、当局の既存の登録ガイダンスは著作物が人間の創作の産物であることを長い間求めてきました。当局の「著作権局実務大要 (Compendium of Copyright Office Practices)」の1973年版にて、当局は「その起源が人間の代理人に起因する」ものでないものは登録しないと警告しています。1984年に発行された大要の第2版では、「著作者という用語、著作物が著作権を有するためには、その起源を人間に負っていなければならないということを意味している」と説明されています。そして、実務大要の現行版において、当局は「著作権のある著作物として認められるためには、著作物は人間によって創作されなければならない」とし、「人間の著作者からの創造的な入力や介入なしに無作為または自動的に動作する機械または単なる機械的プロセスによって制作された著作物は登録しない」と述べています。
著作権登録制度を監督する機関として当局は、人間の著作物と技術もしくは技術の支援によって生成されたものを含む著作権のない素材が組み合わされた登録申請作品の評価について豊富な経験を有しています。まず、「作品が基本的に人間の著作物であり、コンピュータ (またはその他の装置)が単に補助的な道具であるか、もしくは作品における伝統的な著作権要素(文学、芸術、音楽といった表現または選択、配置等の要素)が、実際には人間ではなく機械によって考案され実行されたか」と問います。AIが生成した素材を含む作品の場合、当局はAIによる貢献が「機械的再現」の結果であるか、それとも著作者の「目に見える形とした自身によるオリジナルの精神的な構想」であるかを検討します。答えは、状況、特にAIツールがどのように動作し、最終的な著作物を作成するためにどのように使用されたかによります。これは、必然的にケースバイケースで検討されます。
作品の伝統的な著作権要素が機械によって生み出された場合、その作品は人間の著作権要件に欠けており、当局はそれを登録しません。例えば、AI技術が人間からのプロンプトのみを受け取り、それに応答して複雑な文章、映像、または音楽作品を生成する場合、「著作権の伝統的要素」は人間のユーザーではなく技術によって決定し、制作されます。現在において利用可能な生成AI技術に関する当局の理解によれば、このようなシステムがプロンプトを解釈して素材を生成する手法においてユーザーは究極の創造的な制御を行使することはありません。むしろ、これらのプロンプトは依頼されたアーティストに対する指示のように機能します。プロンプターは何を描かせたいかを特定しますが、その指示がどのように出力に反映されるかは機械が決定します。例えば、ユーザーがテキスト生成技術に「ウィリアム・シェイクスピア風に著作権法に関する詩を書いてください」と指示した場合、そのシステムは詩として認識でき、著作権について言及し、シェイクスピアのスタイルに似たテキストを生成することが期待できます。しかし、韻を踏むパターンや各行の単語、文章の構成はテクノロジーが決定します。AI技術がそのアウトプットの表現要素を決定する場合、生成された素材は人間の著作物の産物ではありません。その結果、その素材は著作権で保護されず、登録申請で否認されなければなりません。
しかし、他のケースではAIが生成した素材を含む作品にも著作権の主張を裏付けるのに十分な人間の作為が含まれます。例えば、人間はAIが生成した素材を十分に創造的な方法で選択または配置し、「結果として作品全体がオリジナルな著作物として構成させる」ことができます。あるいは、アーティストが元々はAI技術によって生成された素材を著作権保護の基準を満たす程度に改変することもあります。このような場合、著作権は人間が作成した側面のみを保護し、AIが作成した素材自体の著作権の地位から「独立」しており、「影響を与えない」ことになります。
この方針は、技術的なツールが創造的なプロセスの一部となり得ないことを意味するものではありません。長期の間、アーティストは作品を創作するため、あるいは表現上の作品を再構成、変形、適応させるためにそのようなツールを使用してきました。例えば、Adobe Photoshopを使って画像を編集するビジュアルアーティストは改変された後の画像の著作者であり続けますし、音楽アーティストは、サウンドレコーディングを行う際にギターペダルのようなエフェクトを使用することもあります。いずれの場合も重要なのは、人間が作品の表現に対して創造的な制御を行使し、伝統的な著作権要素を「実際に形成」していたかということです。
(米国著作権局への著作権登録の際の手続き方法と注意が書かれているだけなので割愛)
本方針表明は、AI技術によって生成された素材を含む作品の登録に関する当局のアプローチを示すものです。当局はAIと著作権に関わる新たな事実と法的な議論を注視し続け、将来、この技術が関係する登録またはその他の著作権問題に関連する追加のガイダンスを発表する可能性があります。
日付:2023年3月10日
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