フリーランスは基本的にはスポットで求められている作業をスポットで実施する。新卒ではないので即戦力が求められている。逆に言うと新卒は即戦力を求められていない。フリーランスに限って言うとフリーランスの仕事というのはそのほぼ全部が昔取った杵柄でしかなく(昔取った杵柄にしか仕事は来ず)、今日やっている作業を延々と何十年も続ける未来以外を描くのは意外と難しい。
フリーランスの仕事は昨日と同じことをしていますが昨日の倍の単金をいただきますというのは通らない。水光熱費が高騰しようがフリーランスにベースアップはない。量を増やすか質を上げるかのどちらかをしないと年商が増えない。しかし…
たとえば玉掛けやったことがない人間が玉掛けできますとか言って現場に入り込む(※違法)とかは発注側としては超NGなのであって、そもそも資格持ってないやつに発注するとかありえないし、有資格者はたくさんいるわけなのでわざわざ素人を捕まえてきてやらせる意味は本当にない。一方で新卒者が玉掛けできないのは当たり前で、講習なんて一瞬で終わるので受けてこいという話になるのは当然だ。正社員は会社の金で学習する機会がある。フリーランスにはない。巷ではエンジニアが業務外に学習することの是非について、仕事なんだから仕事でやれとか、無理とか、いろいろと喧しいが、フリーランスの場合は答えは明らかだ。仕事削って無職としてやるしかない。金にならん。
玉掛け講習なんて3日とかなんで、まあ黙ってやれよという話かもしれないが、世の中そこまでシンプルなものばかりでもないだろう。また一度得たスキルがそのままずっと通用する、という性質のものと、そうではないものがある。玉掛けだって5年毎に再教育がある。もっと早いペースで陳腐化していく技能だってあるのだろうと思う。知らんけどCoffeeScriptとか? そうなったときに今自分にあるスキルと心中するのか一瞬無職になってどこかの技術に再度賭け直してしていくのかというストレスフルな意思決定をフリーランスは都度していかないといけない。正社員は、それは会社の責任で再教育をするだろう。その期間の給料も出るだろう。でもフリーランスにはないんだよな。
いろいろと詰むのを打開するには玉掛けやったことがなかったとしても玉掛けできますとかハッタリかまして現場に入り込む(※違法)、というやつが結局安直で、おそらく少なからぬ人が手を染めているだろう。流石にド直球に違法なやつに突撃する人は少ないかもしれないが、実務経験を偽って現場に潜り込みました的な話は漏れ聞くところによると多数あるようだ。
フリーランスの場合は会社から送り込まれたとかでもなく、自分でそういう行為に手を染めていかないといけない。ハッタリかましてあくまで経験あるかのように涼しい顔で振る舞いながら裏では入門書と首っ引きで仕事するとかそういう姿勢が求められる。要は顧客企業をある程度いいようにダシにしていくことを意識的に選択し続ける必要があるわけだ。今でこそフリーランスもリモートワークっぽい場合も散見され、そういう場合は多少はごまかしが効くだろうが、全員がそういうイージーモード案件で生きているわけでもなかろうとも思う。
こういう姿勢を続けていかないと中長期的に見て将来が暗いぞというのは、真面目な人間にとってはあまりにもストレスフルであるように思われる。