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ちらする唯の人である。唯の人が作った人の世が住みにくいからとて、越す國はある
まい。あれば人でなしの國へ行く計いだ人でなしの國凭の世よりも猶住みにくか
らう。
2
くつろ
越す事のならぬ世が住みにくければ、住みにくい所をどれほどか、寬容けて、束の
間の命を^束の間でも住みよくせねばならぬ。こ に詩人といふ天職が出來て、こ.
に畫家といふ使命が降る。あらゆる藝術の士は人の世を長閑にし、人の心を豊かにす
るが故に尊い。
住みにくき世から、住みにくき煩ひを引き抜いて、難方い世界をまのあたりに寫す
のが詩である。あるは音樂と彫刻である。こまかに云へば寫さないでもよい 只まの
あたりに見れば、そこに詩も生き、歌も湧く。着想を紙に落さぬとも璆鏘の音は胸裏
に起る。丹青は畫架に向って塗抹せんでも五彩の絢爛は自から心眼に映る。只おのが
住む世を、かく觀じ得て、靈臺方寸のカメラに澆季溷濁の 收め
得れば足る。この故に無聲の詩人には一句なく、無色の畫家には尺綠なきも、かく人
世を觀じ得るの點に於いて、かく煩腦を解脫するの點に於いて、かく清淨界に出入し
得るの點に於いて,又この不同不二の乾坤を建立し得るの點に於いて.我利私慾
絆を掃蕩するの點に於いて·111千金の子よりも、萬乘の君よりも、あらゆる俗界の
寵兒よりも幸福である。
俗界を清くうら」かに
世に住むこと二十年にして住むに甲斐ある世と知った。二十五年にして明暗は表裏
の如く、日のあたる所には屹度影がさすと悟った。三十の今日はかう思うて居る。
11喜びの深きとき憂愈深く、樂みの大いなる程苦みも大きい。之を切り放さうとする
と身が持てぬ,片付けようとすれば世が立たぬ。金 のが殖えれば
寐る間も心配だらう。戀はうれしい、嬉しい戀が積れば丶戀をせぬ昔がかへつて戀し
+6大事だ、
大事なも
。。