カート・クロニンガー/ニック・ブリッツ
1 コンピュータは間違いを犯さない、人々が犯すのだ。同じ変数で、同じ入力なら、コンピュータは常に同じ出力を表示する。しかしながら、しばしばプログラマーが手を滑らせ、ループを閉じるのをわすれたり、不意にメモリリークを残したりする。しばしばユーザーは想定されていないやり方でファイルを開くし、ファイル転送が終わらないうちにUSBを引き抜いたりする。それがまったくありきたりな、しかし想定外の出力結果を導く。私達はそれをコンピュータのせいにし、その瞬間のことをグリッチと呼ぶ。
2 おそらく、グリッチとはシステム障害のことだと思われているだろう。我々の目的にかなった実際的な見方によれば、その障害がシステムの輪郭をはっきりと暴く、そのやり方にこそ価値がある。無数の違った失敗の仕方があり、それぞれが新しい方法でシステムの振る舞いのユニークな(ユニークに利用可能な)輪郭を描く。ハイデガーの壊れた鉄槌により世界全体を停止点検する(我々のすべてのキンタマ道具、キンタマ計測、靴、ワークショップ、丘の中腹、牛の隠れ家、雨、ふくろう、大槌、ファミコン)。我々が暗黙のうちに使っている世界、気付かぬうちに巻き込まれている世界を。しかし、だからなんだ?壊れた鉄槌を見つめるのをやめて、もっと鉄槌を壊してみよう。無数の壊れた鉄槌。