- 工学としてのSRE再訪
SREが普及するにつれて、システム管理のアプローチは技芸から工学(科学)へ移り変わっています。2010年発行の書籍ウェブオペレーションでは、「ウェブオペレーションは技芸であり、科学ではない。」と書かれています。システム管理の個別具体的な技術はコンピュータサイエンスに依るとしても、個別技術の集合体と人間が統合されたサービスを正常に稼働させ続けることは技芸の範疇にありました。SRE普及以後は、ユーザー視点に基づくエンドツーエンドの信頼性を定義・計測し、計測結果に基づいて、開発・運用の意思決定を行うようになりました。しかしながら、システム管理の分野を技芸から工学へと昇華させるための土台となる知識や過程、その精神は、現在のエンジニアコミュニティにはいまだ共有されていません。
そこで、本発表では、コンピュータサイエンス、ソフトウェア工学、信頼性工学、認知科学などの工学・科学分野がSREにどのように接続されているかを、歴史的な論文や書籍、SREcon、LISAなどのプレゼンテーションを基に、発表者の見解を交えながら、紐解いていきます。