私とwhywaitaは雀荘で出会った。という書き出しはもちろん嘘なのだけれど,何回か彼と卓を囲んだことがある。毎週のようにフリー雀荘に行ってしまう私とは違って,彼はさいきんポーカーにのめり込んでいるようで,あまり一緒に麻雀を打つ機会はなくなってしまった。彼の誘いでサイバーエージェントの麻雀部にも加入したものの,彼はぜんぜん定例戦にも参加せずポーカーばかりしている。ポーカーが楽しいのもわかる。私も何度かプレイしたことがあるからだ。けれど彼にもう一度麻雀に戻ってきてほしくて,今この文章を書いている。そんなわけで,ポーカーと麻雀を比較しながら,麻雀の優れた点をいくつか挙げてみよう。
ポーカーは52枚のトランプを使うのに対し,麻雀では136種類の牌を使う。牌というのは麻雀で使うタイルのような小道具で,なぜかカードではない。なぜか鳥が描かれていたり,なにも描かれていない真っ白のものがあったり,なぜか赤いものがあったりする。まずは牌がどの数字を表すのかを覚えるところから麻雀は始まる。
加えて用語はすべて中国語である。まずはゲームに使う用語を覚えなければなにもはじまらない。
麻雀のルールはポーカーに比べるとあまりにも複雑だ。ポーカーに比べると役は格段に多いし,無駄に複雑な点数計算は初心者をカモるためとしか考えられない。立直 (リーチ) という役があまりにもぶっ壊れすぎていて強いくせに,混全帯么九や純混全帯么九といった役はあまりにも不遇だ。酔っ払って作ったとしか考えられない役の出現度にも大きな偏りがある。37種類も役があるくせに上位7位の混一色ですら出現率は6%である。役を覚えなきゃ麻雀はできないと思われがちだが,実際には10コくらいを覚えておけばよい。
しかもこのルールは統一されていない。Mリーグルールが普及してきて覇権を握りそうではあるが,そうであっても仲間内や雀荘によってルールは微妙に異なる。麻雀をするときはまずルールを確認することからはじめよう。
麻雀の基本的なゲームの流れは,はじめに配られた13の牌をもとに,山札から1枚ずつ取って (ツモという) いらないものは捨ててを繰り返し,特定の形を作って役ができたらアガリ,それを一般的には2周して,最後に点数を多く持っていた人が勝ち,というものである。しかし配牌は偏る。どれだけ上級者であっても配牌が悪ければ和了できない。まるで人生のようである。
ポーカーの魅力はその高度な心理戦にある。けれどポーカーに比べると,麻雀の心理戦はどうやってもお粗末だ。麻雀はどうやってもその局でひとりしか和了 (アガリ) できないし,多くの場合は自分の手を見ての自己都合であることが多い。押す手は他プレイヤーがどうであれ押すし,オリる手はオリる。どれだけ高い手を聴牌 (あと1牌で和了できること) していても他プレイヤーが先に和了してしまえば負けるし,逆に相手の手をさっさと和了して潰すこともできる。
和了率という指標がある。その人がある局にどれくらいアガれるかの確率なのだが,プレイヤーが単純に4人いるために,どう高く見積もっても100/4=25%くらいが関の山だ。実際には上級者であっても23%くらいになることが多い。そのため4回に3回はオリることになる。もちろんオリるより和了する方が楽しいのは言うまでもない。
麻雀には発声というものがある。ポン・チー・カン・ロン・ツモといった声を出す必要があり,非常に面倒である。しかもポンとチーは同時に起こる可能性もあり,基本的には発声かポンが優先であるが,これも時折トラブルに発展する。ポン・チー・ロンは他人の捨てた牌を自分のものにできる楽しいルールだ。これがさらに麻雀を複雑にし,わかりづらいものにしている。
書き始めると3日分の記事になってしまうが,とにかくルールがクソなのが麻雀の特徴だ。謎のラッキーで役がつくくせに,労力と点数がとにかく見合っていない。毎週欠かさず打っても体感で1年に1回出るか出ないかの例外を万が一に備えてケアしなければならない。
またゲームの勝利条件もなかなかに複雑だ。最終的には持ち点が多い人が勝ち,つまり自分の最終順位をなるべく上げることがゲームの目的だ。しかしそのためには和了れるときにしっかり和了し,自分の手がダメなときにはさっさとオリて点数を減らさないことが重要だ。
麻雀を複雑にしている大きな要因のひとつがこの点数計算だ。これは無駄に複雑にして初心者をカモるためにあるので仕方ないといえば仕方ないのだけれど,基本的な法則はあるにせよ結局は暗記ゲーである。ある程度打ち慣れた人がいたり,ネット麻雀であったりすれば点数計算はできなくても問題ないが,一定のレベル以上で打つためには必ず必要になるスキルだ。なぜかというと勝利条件は順位を上げることにあり,そのためには複雑なルールを乗り越えて自分の手の点数を正確に見積もる必要があるからだ。ちなみに私は未だに点数計算をときどきミスする。なんとかならんのかねこれ。符計算とか。
以上が麻雀の主な魅力になる。Whywaitaがまた麻雀に戻ってきてくれることを信じて,むすびの言葉とする。