「CTO採用したいんやがどんな人採用すればいいかわからん」と聞かれることあるので、自分のスタートアップのCTO感をここにふらっとまとめてみる。
そもそもCTOは
- 経営チームのメンバーである
- すなわち経営職である
- 経営判断能力と執行能力があること
- 経営チームのミッションは企業価値を最大化することである
- 会社を次の成長フェーズに移行させること
- 会社を最速で成長させること
本質的に重要なことは結果的に企業価値が最大化されることで、シード期のCTOに求められる役割はプロダクトを開発することかもしれないし、PMF後のCTOに求められる役割は組織作りかもしれない。要するに一概にこれだというものはない。
CTOは一般的には組織・事業・財務において次に影響力をもつ
- 組織
- エンジニアの採用を成功させること
- エンジニアのパフォーマンスを最大化する組織をつくること
- 事業
- 短期において、プレーヤーとしてプロダクトに貢献すること
- 長期において、技術的負債をコントロールすること
- 財務
- 開発費用(≒エンジニアの人件費)をコントロールすること
- インフラ費用をコントロールすること
ここでいうコントロールすることというのは全社の組織・事業・財務を短期的・長期的に俯瞰し、なににどれだけbetするかを意思決定し、これを推進することである。
例えば事業計画の必達が絶対なフェーズなら技術的負債は放置すべきかもしれない、営業力の強化が必要なフェーズならエンジニア組織構築よりも営業組織構築を優先するほうが良いかもしれない、顧客を見ずに技術に振り切ったほうが良いフェーズもあるかもしれない。
技術的負債をなくすのはtech leadの仕事であって必ずしもCTOの仕事ではない。CTOの仕事は技術的負債を今どれだけ許容できるかの判断をし方針を作ることで、これは技術的観点というより組織と事業と財務の観点から判断される。
Full CTO = Pure CTO + VPoP + VPoE は次の3つに責任をもつ。基本的には engineering management triangle と同じである。
- 技術
- プロダクト
- チーム
当然ながら全ての領域に得意なCTOというものは存在しない。
会社によってはVPoPやVPoEがいるかもしれない、CEOは技術に詳しいかもしれないしそうでないかもしれない。そもそもCTOは必要かもしれないし必要ないかもしれない。チームに合わせてCTOを採用するかもしれないし、良いCTOが入ったらそれに合わせてチームをつくるかもしれない。
重要なのは経営チームという一つのチームをつくることであるから、考えるべきことは
- 今、会社にとって重要なこと
- 現在の経営メンバーの得意、不得意
- 作ろうとしているチーム像
- 想定されるCTO像
また、
- メンバーとして経営チームに貢献すること
- 上級管理職として全社に貢献すること
- 会社を代表する人材としてふさわしいこと
は必須の資質である。例えばリーダーシップとかマネジメント能力はほとんどの場合必要だろう。
CTOがfulll stackである必要はないが、経営チームはチームとしてfull stack(=企業価値を最大化するための最高のアクションを執行可能)である必要がある。
これがあればCTOあるいはCTOではないというものはない(CEOにも得意不得意があるのと同じ)。ただし、具体的にこういう能力が求められることは多いだろうというものはいくつかある。
- master architect
- 社内の全技術を掌握すること
- プロダクト開発に高い貢献をすること
- モダンな環境を作りあげ、開発効率を最大にすること
- インフラ費用を最小に抑えること
- 優秀なエンジニアを社内において育成すること
- 社内のエンジニアの精神的支柱あるいはお手本
- 社内の全技術を掌握すること
- 採用への影響力
- 社外へのプレゼンス、広告塔、コミュニケーション
- エンジニアの最終面接官、最後の砦
- 組織をつくる能力
- 組織デザイン、マネージャーの採用・抜擢・育成
- 人事、評価、査定
- 採用プロセスの構築
- プロダクトマネジメント
- product managerとしての能力
- マーケティング・営業
- マーケターあるいは営業としての能力
- 人事・財務・管理
- 管理部門の知識を有すること
CTOはtech leadでもengineering managerでもないが、実際には両方の経験は必要だろうし、ほとんどのスタートアップにおいては役割を兼任する必要があるだろう。
CTOになぜマーケターの能力が求められるのか?それは例えばこういうことがあるからである
- 社外のエンジニアと最も話すのはCTOになるはずだから、CTOのプレゼン能力は極めて高い必要がある
- エンジニア向けの採用デックをつくるとしたらそれを作るのはおそらくCTOである
- マーケ費とインフラ費、どちらか重要だろうか?これは両方の知識を突き合わせないとわからないが、両方に詳しい人がいれば最高の判断ができるだろう(プロダクト開発においてエンジニアにもプロダクトマネジメントやデザインの知識があったほうが良いというのと同じ)
- 経営チームにCMOがいるとは限らないし、CEOよりCTOのほうがマーケティングに詳しいかもしれない、こういうことはありうる、CEOは神ではないしCMOを都合よく採用できるとも限らない
全てを持っている人はいないが、会社にとって必要なことができる人を選べば良く、そういう人は世の中にいるだろう。