近年、コマンドラインインターフェース(CLI)上で動作するAIコーディングツールが注目を集めている。これらが提供する体験の本質は、単に高精度なコードを生成することだけではない。真の価値は、ユーザーの目の前で展開される「Agentic Loop[^1]」の設計にある。
このループの構造を分解してみよう。AIは決して一発で完璧な回答を出すわけではない。むしろ、不完全なコードを出力し、それを実行し、発生したエラーメッセージを読み取り、自らの手で修正を加える。この一連のプロセス、すなわち「試行、失敗、観測、修正」のサイクルこそが、これらのツールの核である。
興味深いのは、ユーザーがこの泥臭い修正過程を「stdout[^2]」を通じてただ眺めているだけでよいという点だ。人間が介入せずとも、システム自身が「コンパイラ」や「テストランナー」という絶対的な審判からフィードバックを受け取り、正解へと収束していく。ここには、自己効力感にも似た、ある種の確実性が存在する。コードの正しさは、実行結果という揺るぎない事実によって支えられているからだ。