移動中や布団の中など、スマートフォンでAIとあれこれ壁打ちをしている時間は日常の中に結構たくさんある。
そうやって話していると、途中でふと小さなもどかしさを感じることがある。
- さっき自分が入力した前提を少しだけ修正したい
- この質問に対する答えだけ、別のモデルの反応も見てみたい
- 会話の途中から別の話題へ分岐させてみたい
けれど、今の一般的なチャットアプリだと、途中の発言を編集するとそれ以降の会話がまるごと消えてしまうか、あるいは過去のやり取りを全部コンテキストに抱え込んだまま話が濁っていってしまう。
別のモデルを試そうとして、画面の小さなスマートフォンでプロンプトをコピーし、別アプリを開いてペーストして送信する、という往復作業も地味に指が疲れる。
みんなどうやって使っているのだろう。もっと気楽に、自分のペースで思考の寄り道ができる道具があればいいのに、と思う。
自分が求めている操作感を思い浮かべたとき、一番しっくりくるのがデータ分析などで使われるJupyter Notebookだ。
チャットUIとJupyter Notebookの振る舞いを並べてみると、その違いがよく分かる。
| 観点 | 一般的なAIチャットUI | Jupyter Notebook |
|---|---|---|
| 基本の単位 | 流れて確定するメッセージの列 | 独立して編集できるセル |
| 途中を書き換えたとき | 後続が消えるか、強制的に再生成される | そのセルだけが変わり、後ろは古い状態をキープする |
| 状態の再計算 | 常に全件やり直しか、不可逆の一方通行 | どのセルをどこまで再実行するか自分で選べる |
| 副作用の確認 | 途中の変化をステップごとに追いにくい | セルを1つずつ手動で動かして推移を観察できる |
| コストと時間 | やり直しのたびに全体を再消費する | 必要なセルだけをピンポイントで動かせる |
Jupyterの良さは、あるセルを書き換えても、後ろのセルが勝手に連鎖して自動再実行されないところにある。
ここまでは確定した議論として置いておき、このセルだけ少し言葉を変えて試してみる。その結果を見て納得してから、次のセルを手動で動かすかどうかを決める。
思考の主導権を人間側が持ったまま、のんびり実験できるあの手触りが欲しいのだ。
現状のツールの中で、この感覚に最も近いのはGoogleのAI Studioだと感じている。
[System Instruction]
└─ [User Input 1] ──> [Model Output 1]
└─ [User Input 2 (編集可能)] ──> [Model Output 2]
└─ [ここから会話をFork]
過去の発言をその場で直接書き直せたり、特定のやり取りから会話を枝分かれ(Fork)させたりできるUIは、タイムラインというよりノートブックのセル操作に近くてとても扱いやすい。
ただ、AI StudioはGemini専用の環境なので、当然ながら他のモデルを選ぶことはできない。
この操作感の気楽さを保ったまま、裏側のモデルをClaudeやGPTに自由に切り替えられたらいいのに、と思ってしまう。
自分が本当にやってみたいのは、対話履歴の「再走(リプレイ)」だ。
あるモデルとひとしきり対話した履歴から、自分が入力したプロンプトの列だけを取り出し、それをスクリプトとして別のモデルに流し込んでいく。
【ベース対話(モデルA)】
入力 P1 ──> 応答 R1 (モデルA)
入力 P2 ──> 応答 R2 (モデルA)
入力 P3 ──> 応答 R3 (モデルA)
↓↓↓ (入力列 P1, P2, P3 をそのまま渡す)
【再走(モデルB)】
入力 P1 ──> 応答 R1' (モデルB)
入力 P2 ──> 応答 R2' (モデルB)
入力 P3 ──> 応答 R3' (モデルB)
これをスマートフォン上で、コピペの手間をかけずにボタンひとつで走らせたい。
もちろん、最初の答え(R1')が変われば、元の会話でR1を受けて書いたはずの次の質問(P2)が噛み合わなくなることもある。けれど、そのズレ方を観察すること自体に面白さがある。
再走という仕組みを使って、自分はモデルの何を確認・検証したいのかを丁寧に分解してみる。
前提が長くて複雑な相談をしたときに、モデルがこちらの意図をどこまで一発で汲み取れるかを見たい。
元のモデルAでは読み取りが浅かったために、「いやそうじゃなくてね」と補足を入れるターンが必要だったとする。しかし、別のモデルBで再走させたとき、最初からこちらの言いたいニュアンスを深く汲み取った答えが返ってきたらどうなるか。
ベース対話にあった補足や訂正のやり取りが、丸ごと不要になってスキップされる。
【元の会話】
P1: 長文の相談 ──> R1: 表面的なアドバイス
P2: 補足・訂正 ──> R2: やり直し
P3: 次の質問 ──> R3: 回答
【賢いモデルでの再走】
P1: 長文の相談 ──> R1': ニュアンスまで汲んだ深い回答
[P2: 不要なのでスキップ]
P3: 次の質問 ──> R3': 回答
この「訂正ターンが減った」という現象は、そのモデルがこちらの機微をどれくらい読んでくれたかを示す、とても分かりやすい目安になる。
事実として正しいかどうかとは別に、対話相手としての読解の深さを確かめたい。
再走させたときに、元のモデルとはまったく異なる切り口やアプローチで回答が返ってくることがある。
これは失敗ではなく、セカンドオピニオンとしての価値がある。「おっ、そっちの角度から考えるんだ」という分岐をシステム側が検知して教えてくれれば、多角的な視点を手軽に手に入れることができる。
愚痴や断片的な思いつきを何ターンか話したあとに、モデルが「つまり、あなたが本当に向き合いたい課題はここですね」と1つの綺麗な問いにまとめてくれる能力があるかどうかも見たい。
散らかった文脈をぎゅっと凝縮してくれると、思考の霧が晴れて整理される。
コンテキストの凝縮によって1つの本質的な問いが取り出せたら、今度はその問いに対して、じっくり推論するのが得意なモデルに全力で回答(Deep Thinking)を考えてもらう。
対話相手として機微を汲み取るフェーズと、定まった問いを全力で解くフェーズは、別の面白さがある。
こうして再走を眺めていると、「どのモデルが一番か」という単純な優劣ではなく、それぞれの個性が見えてくる。
| モデルのタイプ | 得意なこと | 期待する役割 |
|---|---|---|
| 聞き上手タイプ | 雑な入力からニュアンスや機微を拾う | 最初の壁打ち相手 |
| 要約上手タイプ | 複数ターンの話を1つの問いに凝縮する | 思考の整理・前処理 |
| 推論特化タイプ | 定まった問いを深く多角的に解く | 凝縮された問いへの全力回答 |
| 多様性タイプ | 変わった切り口で別のアプローチを出す | セカンドオピニオン |
最終的にやりたいのは、この得意分野に合わせてタスクをゆるやかにバトンタッチしていくことだ。
[スマホからの雑な思いつき]
│
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【読解・凝縮】 ───> 聞き上手・要約上手なモデルが1つの問いにまとめる
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├─ 凝縮された本質的な問い Q
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├──> 【全力回答】 ───> 推論特化モデルが深く解く
│
└──> 【別視点】 ───> 多様性モデルがセカンドオピニオンを出す
1つのモデルに最初から最後まで完璧さを求める必要はない。
スマートフォンから投げた思考を機微の得意なモデルが受け止め、本質的な問いに磨き上げ、それを推論特化のモデルに解かせる。
Jupyterのようなマイペースな手触りで、モデルたちを気楽に使い分けられる作業台があれば、日々の思考の壁打ちはもっと自由で身軽なものになる気がしている。
ちなみにこの記事は全部スマホで作った
履歴メモ