ナッジはもともと「ヒジで軽くつつく」という意味。
私たちの意思決定には合理的なものからのズレが予測可能な形で存在する。予測可能なズレが存在するのであれば、そのズレを逆に利用することで、意思決定をよりよいものに変えることができる。
人々の選択の自由を確保しつつ、しかし金銭的なインセンティブを用いずに、行動変容を引き起こすことができる。
人々の行動をよりよい方向に誘導するのがナッジで、私利私欲のために誘導するのはスラッジと呼ばれる。
合理的な意思決定から予測可能な形でズレていることを「バイアス」と呼ぶ。
私たちの計算能力には限界があるので、きちんと考えずに近道で考えたり経験則で判断したりする。このような意思決定の仕方を「ヒューリスティックス」と呼ぶ。
確実性効果 | 確実なものを強く好む効果 |
損失回避 | 利得よりも損失を大きく感じる |
社会的選好(利他性・互恵性・不平等回避) | 他人の状況も自分の満足度に影響する |
サンクコストの誤謬 | 戻ってこない費用を取り返そうとする |
平均への回帰の誤謬 | ランダムに生じている事柄から因果関係を見出そうとする |
意思力 | 意思決定力が消耗する |
選択過剰負荷 | 選択肢が多すぎると選択しなくなる |
情報過剰負荷 | 情報が多すぎると内容を理解しなくなる |
メンタルアカウンティング | お金を心理的な会計項目別に管理する |
利用可能性ヒューリスティック | 手に入れやすい情報だけを用いて意思決定する |
代表性ヒューリスティック | 特定の属性だけをもとに意思決定する |
アンカリング効果 | 最初に目にした数字に意思決定が影響される |
極端回避性 | 上中下の選択肢があると両端のものを避ける |
社会規範・同調効果 | 多数派の行動に従う |
B | Behaviour | 人々の行動を見る |
A | Analysis | 行動経済学的に分析する |
S | Strategy | ナッジの戦略を考える |
I | Intervention | ナッジによる介入をする |
C | Change | 変化させる |
- 本人は、自分が本来しなければならないことを知っていてそれが達成できないのか、それとも望ましい行動そのものを知らないのか?
- 自分のすべき行動を知っているのならば、自制心を高めるナッジが有効だ。
- 望ましい行動そのものを知らないのであれば、その行動をしないと損失を被ることを強調したメッセージや、デフォルト設定や社会規範に基づくメッセージを利用する。
- 自分自身でナッジを課すだけ十分に動機づけられているか?
- 本人の意欲が高ければ、コミットメント手段を提供する。
- 本人の意欲が高くなければ、政府や組織が設定する外的なナッジが必要だ。
- 情報を正しく認知することができれば行動を起こすのか、それとも認知的な負荷が過剰なために行動ができないのか?
- 情報の認知に問題がある場合は、情報を理解しやすいように、損失回避や社会規範を用いたり、必要な情報をシンプルにタイミングよく提供するナッジが有効だ。
- 目的の行動ができないのは、引き起こしたい行動と競合的な行動が存在するためなのか、単に惰性のためなのか?
- 競合する行動を抑制すべきか、目標行動を促進すべきかを判断する。
どのようなナッジを優先すべきかは、意思決定の上位にあるボトルネックを解決するナッジを選択することが最も重要だ。
E | Easy | 簡単か?情報量は多すぎないか?手間がかからないか? |
A | Attractive | 魅力的か?人の注目を集めるか?面白いか? |
S | Social | 社会規範を利用しているか?多数派の行動を強調しているか?互恵性に訴えかけているか? |
T | Timely | 意思決定するベストのタイミングか?フィードバックは速いか? |
将来の目標だけでなく、今日の行動を目標に | 即時報酬 |
コミットメント手段を利用 | 罰則 |
贈与交換を利用 | 情報交換や励まし |
デフォルトを利用 | ルール化 |
社会規範を利用 | 周囲の人を参照点にする |
ナッジはすでにありふれたものもある。
ナッジは選択の自由を保障する。
選択の失敗から学習することについても、学習機会を提供するようなナッジであれば問題ない。
政府や官僚のバイアス問題については、透明性と説明責任を課する。
ナッジは市場競争がうまく機能しない場合に導入すべき。
デフォルトは自主性を失わせるか?デフォルトに従うことで時間とエネルギーを節約し、より重要な問題で自主的な意思決定が可能になる。