更新: | 2024-10-08 |
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作者: | @voluntas |
バージョン: | 2024.1 |
URL: | https://voluntas.github.io/ |
定期的に更新している
自分が経営している会社で採用している評価制度を運営してそろそろ 10 年以上すぎた。
タイトルは従業員にこの評価制度の話を聞いたときに「うちは評価制度が無いという評価制度の会社だと思っています」という話をされて、上手く表現してると感じたので使わせて貰った。
評価制度が無いということの考えも書くが、あくまで運用した経験ベースで書いてある。
評価制度は状況や環境により変えていく必要がある。
この評価制度は 現在の時雨堂に対して適用している評価制度 である。
この制度は時雨堂が前提なので、銀の弾丸では無い。時雨堂でうまくいくから他社でうまく行くわけでは無い。
個々の会社に合わせた評価制度がそれぞれあるべきで、どれが一番とかは無いはずだ。
時雨堂 では評価制度が無い。つまり従業員の給与は全員同一である。
これは職業関係なく技術と総務、全て同じ金額である。
また、賞与の評価も無く、会社が用意した賞与総額金を従業員の人数で割る。
従業員は入社前に評価制度がない事、賞与が保証されない事を伝えられ、それに納得した上で入社して貰っている。
さらに月の給与はキャッシュフロー対策として低く設定されており、賞与で還元する仕組みとなっている。
評価制度を話す前にまず会社の状況を説明する必要があると思う。
時雨堂の従業員は 1 桁の零細企業である。
自分が株を 100 % 保持している創業者であり代表取締役で、 自分が会社の決定権を実質保持している状況である。
かなり小さな零細企業で、今後最大で 7 名までしか従業員を増やす予定は無い。
さらに、営業を雇う予定は今後一切無い。
評価制度が無いというのは具体的のどのような状況になるかを説明する。
- 評価面談が無い
- 賞与面談が無い
- 昇級試験が無い
- 目標提出が無い
- キャリアパス面談が無い
つまり、従業員は評価に関わる全てのことを意識することがない。悪い言い方をすれば意識できない。
どんなに努力して結果を出しても給与は上がらない。 ただし会社の売り上げが上がれば結果が 1/人数分 されてボーナスとして還元される可能性が高い。
会社としては 従業員は結果を出すため最大限やれることをやっている という考えを持つことにしている。
もちろんこの制度には沢山の問題点があるのでそれをどう解決していくのか書き出してみた
- 自分は他人の人より頑張っているという感情
- その評価制度を適用している会社への転職を推奨している
- 給与が少ない
- 給与が高い会社への転職を推奨している
- 偉くなりたい
- 会社を作るまたは転職すること推奨している
- 人数が多くなるとうまくいかないという助言
- 会社自体を大きくする気が無いので、特に問題無い
- 技術と総務ではやってることが違うのに給与が平等なのはおかしい
- 平等とする という制度なので、他の会社へ転職することを推奨している
つまり、問題点は全て「この制度を導入している会社だが、それでも入りたいか?」という入社前の確認と、 入社後に「転職先を紹介する」という二つ、入り口と出口でのサポートにより解決をしている。
また人数が大きくなってくるとうまくいかないという助言をよく頂くが、 今は小さくうまくいっているので特に問題無いし、 今後も 100 人の会社にするつもりがないので、このまま上手く運用していくつもりだ。
- 会社を大きくしないと売り上げが上がらない
- 小さいまま売り上げを上げるので良い
- 2021 年 2 月は月の売上が 4000 万円を超えた
- 2022 年 4 月は月の売上が 4000 万円を超えた
- 2023 年 4 月は月の売上が 4000 万円を超えた
- 2024 年 3 月は月の売上が 4000 万円を超えた
- 2024 年 4 月は月の売上が 5000 万円を超えた
評価制度にはずっと疑問を抱いており、 そもそも誰もが納得できる評価制度は無いのでは?と感じたというのが一番の理由である。
また、最初は偉い人が全て全員の評価を行う。 という制度も考えていたが自分は出来た人間では無いので公平に評価できる自信が無く、それは出来れば避けたかった。
また自分はコードを書きたいので、部下の評価面談とかしたくない。 さらに部下も評価面談に使う時間より自分を磨く時間に使って欲しい。
評価が無いというのは、自分が平等に評価できる唯一の評価制度だった。
実際 10 年運用してきたが評価の負担が共に一切ないのはとても素晴らしいと感じた。
従業員は「評価」を恐れなくてもいい。自分が考えるやり方で最高の結果を出してくれればいい。 もちろん辛いとき大変な時は無理をしなければいい、そのときも評価を気にしなくて良い。
評価する側は、売り上げのみを意識すれば良くなる。売り上げが下がれば賞与の割合を下げる。
ただし、経営者の仕事の一つは会社の利益を上げるのも含まれているので、 売り上げが下がったのは従業員の責任ではなく経営者の責任である。
それは評価制度とは別の話と考えているので、つまり評価する側は意識することは特にない。
これが一番懸念点になると考えていたが、採用のフローを考えると実はあまり気にしなくて良いと考えている。
時雨堂の場合、従業員の職務の一つに「採用面談」が存在する。
詳細は以下を読んでいたくコトを前提として割愛する。
入社条件は「従業員全員の了解が得られなければ採用しない」というルールになっている。
従業員の採用は「自分の賞与が減る」という可能性を意識する必要がある。
そのため、稼いでくれそうか、自分が稼ぐ際に手伝って貰えそうかなどが評価のポイントとなる。
また、一緒に仕事をやっていく上で辛くないか、自分より出来るか等かなり厳しい評価をする事になると考えられる。
つまり面接にコストをかけることで「評価の無い制度」の運用コストを減らす事が出来る。
また、入社時に「評価の無い制度」の理解を徹底するために、 実際に評価が無い中で仕事している従業員が入社希望に対して自分の感想を伝えて貰うという仕組みを考えている。
入社後お互いが不幸にならないために制度の理解を徹底する。
社会情勢的な理由で昇給は行う。 それ以外では昇給の保証は一切無い、ただし下げる予定は無い。
零細企業の場合はいつ潰れるか分からない、給与は固定費のためキャッシュフローを圧迫する。
タイミングなども一切保証しないので、当面は賞与を多めに出してカバーする。
期が変わるタイミングが適切だと最近は考えているが、 これはいつ変えるかわからない。
2 期から 3 期に変わるタイミングで 10% の昇給を行った。 これは安定した利益が出ていることと、消費税率が上がったことの二つで行われた。
7 期から 8 期に変わるタイミングで 17% の昇給を行った。 これは消費税率が 10% に上がるため。
ここ数年の賞与金額は 1 人 1200 万以上。
営業を取ると、営業は実績ベースを求めるので評価制度が必要と言われる事がある。
ただ、時雨堂の経営方針を考えると営業を取るという方針は一切無い。
理由は以下の通りだ
- 技術を知らない営業が販売できる製品を作らない
- 数や成果をベースに売り上げを上げるのは広報やマーケティングでまかなえる
- 営業と技術が調整するコストはとても高い
そもそも時雨堂の場合は営業力がある開発者で無い限り、売りにくい製品を作っていると感じている。
またターゲットもエンジニア層であるため、営業が何か出来ることはほとんど無いからだ。
自分には零細企業が社内競争をすると会社は内部から弱っていくという考えもある。
零細企業である時雨堂は社内で競争するのでは無く社外と競争しなければならない。
評価制度を無くした一つに、「自分のよく知らないことは評価できない」ということがある。
経営者なので総務も色々見なければいけないのだが、そこを頑張るのは嫌だった。
それよりコード書いたりしてたい。ということで、基本信頼できる人にお任せにしたい。
そこで裏切られたらそれはそれくらいのスタンス。
つまり違う分野の評価は出来ない。さらに総務は成果が見えにくい。
技術のように「何かを作った、売り上げが上がった」というのが短期間では見えない。
そこを評価するコストはとても高いと感じている。そこにコストをかけたくなかった。
総務も技術と同じく、やれることを最大限にやってくれるはずと考えることにした。
むしろ自分が出来ない事をやっているのだから、それだけでも十分だ。
いわゆる新卒扱いとしての採用は行わない。採用する場合は中途と同様として扱う。
採用最初の年の賞与以外は同一とする。 賞与は最初の年だけは経営者判断にて金額を決め支給する。
採用しない。
評価の無い評価制度は今後も続けていく。 むしろ今の段階では「評価制度を運用していない」と変わらないので負担が無い。
初めまして。
こちらとても参考になります。ありがとうございます。
些末ですが、前提に記載されている上記は「保証されない」のtypoでしょうか。